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染織基礎知識「組織」6

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変化組織

「織物の組織」の項で、組織はあくまで設計図、主役は糸であり、打ち込む人自身。と、記しました。
それは、実際に織ってみると感じることができます。同じ組織でも、糸の種類、筬の違い、打ち込みの強弱、織布の目的で形や風合いが変わります。
よく織られる織り方を、組織図と実際の布の写真で比べてみます。
なお、それぞれの組織図は完全組織図かそれに近いものを載せています。実際の織布は、綜絖、踏木とも完全組織図を繰り返して織っています。
組織図上のグレーの棒線は、経糸、緯糸が浮いていることを表しています。

平織変化組織

昼夜織(ちゅうやおり)

組織図-昼夜織

色や素材感を、綜絖の通し方と踏木の踏み方で、表と裏で見せたり柄の切り替えができる織り方です。

綜絖通しは順通しですが、色または素材を1本交互に通します。混み差しの方が特徴は出やすいです。



市松風昼夜織マフラー-昼夜織

写真のマフラーは、ピンクとブルーグレーの糸を1本交互に通しています。経糸の切り替えは糸の色を綜絖の1番と3番、2番と4番を入れ替えて、緯の切り替えは踏木を「4-5-4-6」から「3-5-3-6」に踏み替えて、表と裏を織り分けていきます。緯糸は1種類1色です。

市松風昼夜織マフラー
素材 経糸…シルクウール 緯糸…ウール梳毛糸2/20


模紗織(もしゃおり)

組織図-模紗織

紗(しゃ)という織物を模した織り方です。本物の紗に比べ格段に易しく、それでいて透けた感じに織ることができます。

経糸、緯糸とも、隣り合った3本の糸の微妙な力関係で寄ったり離れたりして模様を描くことが特徴です。素材によって、よれ方に違いがあることも面白いです。

経糸3本を1目に通し、両脇の筬目を空羽(あきは、からは=糸を通さない筬目)にすることで、透け感が増します。
平織を経、緯ともいれることができます。



絹模紗織マフラー-模紗織

絹模紗織マフラー
素材 経糸・緯糸…絹紡糸 平織の経糸…真綿紬撚糸



麻のテーブルセンター-模紗織

麻のテーブルセンター
素材 経糸…リネン25/2 緯糸…細めの苧麻


経吉野織(たてよしのおり)

組織図-経吉野織

平織の間に、奇数の複本数の緯糸を束にした経糸の浮きの列が規則的に並びます。

綜絖AとBが交互に繰り返されて、隣り合った平織と経糸の列の力関係で湾曲した模様を織ることができます。AとBの基本本数は2本ずつですが、A、Bの本数に差を持たせることで、平織と経糸が並んだ模様にリズム感が出ます。
織布の中に平織が入るので、丈夫な織り方になります。



ブックカバー-経吉野織

ブックカバー
素材 経糸・緯糸…絹紡糸



ショール-経吉野織

ショール
素材 経糸…絹紡績糸60/2、柞蚕大條糸細口 緯糸…絹紡績糸60/2


緯吉野織(よこよしのおり)

組織図-緯吉野織

4本以上の経糸の束の上に、緯糸の浮きが規則的に織り込まれます。平織の中に緯糸の変化が交互に表れて、模様を出します。

綜絖AとBを繰り返し、平織と飛ばした緯糸の間に湾曲ができ、緯吉野織の美しさになります。緯糸は奇数本とします。
綜絖のAとBの本数を変えることで、模様に強弱をつけることができます。



ブックカバー-緯吉野織

ブックカバー
素材 経糸・緯糸…絹紡糸



織り見本-緯吉野織

織り見本
素材 経糸…絹紡糸 緯糸…不明



刺子織(さしこおり)

組織図-刺子織

伝統工芸の刺し子を模した織り方です。平織の間に、経糸の浮きが入ります。経糸が浮いていると引っかかりなどの不安定さがありそうですが、平織部分を混ませることで抑えられます。

踏木のAとBそれぞれのリピートを長くすれば、経糸の飛び方も長くなります。
刺子にみせる経糸の工夫次第で、面白い模様を織ることができます。



服地-刺子織

服地
素材 経糸…アンゴラ入紡毛糸16/2、刺子の経糸…編み物用の太糸 緯糸…梳毛糸20/2



コースター-刺子織

コースター
素材 経糸・緯糸…綿30/2 刺子の経糸…綿16/2


道屯織(ロートンおり)

組織図-道屯織

沖縄地方の織物の代表的な織り方です。

強調したい経縞の筬を混刺し(こみざし:1つの筬目に複数本入れること)にして、平織の中にくっきりとした縞を織ることができます。
踏木のパターンaとbを繰り返すことで、混刺しの経縞が強く浮き出ます。混刺しの箇所を二ヵ所にして、aとb、aとcの踏木のパターンを繰り返す方法もあります。経縞の経糸の浮き方の工夫で、織物が面白くなります。緯に平織のみを入れることもできます。



単八寸帯-刺子織

単八寸帯
素材 経糸…絹紡績糸60/2 混刺しの縞のみ真綿撚糸 緯糸…真綿紬糸900回



単八寸帯-刺子織

コースター
素材 経糸・緯糸…綿30/2 混刺しの赤糸のみ綿16/2

綾織変化組織

綾織変化組織は、綾織=斜文織を基にして模様を描く織り方です。その種類は多様で、人の考える数だけ組織を作ることができます。
綾織変化組織は、ヨーロッパの人々が長い年月をかけて作り上げてきた織り方が多数あります。山形斜文織(Pointed twill)、破れ斜文織(Broken twill)、オーバーショット織(Overshot weave)などです。
また、組織は単純な綾織ですが、四本交互に経糸緯糸の色を替えることで千鳥格子という模様になります。
多様な綾織変化組織ですが、基礎を掴めば自分だけの組織を作ることができます。綾織変化組織の基礎と、綾織変化組織を大きくした綾織拡大組織について記します。

綾織変化組織

組織図-綾織変化組織

ここに載せる綾織変化組織の基本のタイアップは図のようになっています。多くは3番と4番の踏木を省略していますので、ご了解ください。



組織図-綾織変化組織

三原組織の項で記しましたが、斜文織=綾織の完全組織は組織点が2つずつ並んでいます。これは、経糸緯糸とも2本ずつの交差になっていることを表しています。



組織図-綾織変化組織

基本の組織図をもとに、経糸の通し方を山形に変化させます。1-2-3-4-3-2-1…の繰り返しの綜絖順と、1-5-2-6-1-5-2-6…の踏木で組織図を書いてみます。
経糸の飛び方(赤線)は緯糸の対して2つずつですが、緯糸の飛び方(青線)に若干の変化があります。山形にしたことで緯糸が変則になり、経糸を1つ飛び、3つ飛びが入るようになります。このように同じような綾織でも、経糸の通し方に変化をつけただけで組織が変わってきます。



組織図-綾織変化組織

経糸の綜絖通し順は1-2-3-4-3-2-1…のまま、踏木の順を変えてみます。1-5-2-6-2-5-1-5-2-6-2-5-1…と、綾織の基本の踏み順1リピートと真逆の踏み順1リピートを交互に入れ替えて繰り返していきます。この時の踏木1と踏木6は折り返しの通過点となります。
1リピートは緑の横線でくくった1-5-2-6-2-5ですが、組織の交差を見るために2リピート書いてみます。
緯糸だけではなく、経糸も2本飛びと3本飛び、1本で交差している組織点ができます。



組織図-綾織変化組織

このように綾織の完全組織を変化させた組織を、綾織変化組織といいます。
綜絖の通し方と踏木の踏み順によって、幾通りにも変化させることができます。
順通しの1-2-3-4を繰り返し、1-2-3-4の4を山にしてから、4-3-2-1-4-3-2-1…と繰り返すと山形の模様が大きくなります。踏木も1-5-2-6を繰り返し、逆の踏木の6-2-5-1を繰り返すと、組織図上は整った幾何模様ができます。
あるいは、綜絖順1-2-3-4-3-2-1-1-2-3-4-…と折り返しの綜絖1と綜絖4を並べると、また違った組織ができます。
マフラーに使用した綾織変化組織の組織図とその実物のマフラーを例にします。



綾織 シルクマフラー

組織図は整理された幾何模様ですが、実際のマフラーは経糸に対して緯糸を太く節が多い糸を使用しています。経糸緯糸ともにコチニールの淡色で染めているので、組織図のような派手さもありませんし、柄も大きく見えません。素材の組み合わせ次第で、組織の模様を目立たせることも無地柄にしておとなしくすることもできます。
シルクマフラー
素材 経糸…絹紡糸2/20 緯糸…真綿紬300回



綾織拡大組織


組織図-綾織変化組織

綾織変化組織に書いた、経糸1-2-3-4-3-2-1…と踏木順1-5-2-6-2-5-1…の組織図を引き続き参考にします。



組織図-綾織変化組織

この組織に、緯糸の段数を増やして形を大きくしてみます。
1の踏木を2段、5、2、6の踏木を3段重ねて、元の組織を縦に大きくします。踏木の1リピートは17段になります。

組織図上は大きくなりましたが、これを実際に織ることを想像すると、無理が出てくることがわかります。綜絖3番に通っている経糸は緯糸を9段、綜絖4番の経糸は6段、綜絖1番は5段も飛び越しています。織ってできないことではありませんが、経糸が浮いたままになって形が崩れてしまうことはあり得ます。緯糸も同様で、同じ開口に3段積み重なっている状態は安定しているといえません。
こうした場合に織りやすくするため、タビー(tabby)という糸を使用する方法があります。拡大した綾織の組織の間に1段置きに平織が入ることをタビーといいます。その役割は浮いている経糸を留めて模様を安定させること、あるいはタビー自体が模様の一部になることもあります。



組織図-綾織変化組織

綾織のタイアップを変更し、綾織の組織の踏木を1、2、3、4とし、タビーの平織の踏木に5、6を割り当てます。
綾織拡大組織は模様の緯糸とタビーの緯糸を1段置きに入れる織り方で、6本かそれ以上の踏木を使用します。前述の3番、4番が平織のタイアップで織ることもできますが、タビーにあたる平織の踏木の頻度が多いために、タイアップを変えて、左足でタビーの踏木を踏み、右足で模様になる綾織の踏木を踏むように、交互に踏み替えていく方がわかりやすく間違いも少なくなります。



組織図-綾織変化組織

タイアップを変え、模様になる綾織(黒)と抑えになるタビー(水色)の1本交互の踏み順です。1リピートが長くなりますが、こうすることで飛んでいた綾織の経糸が抑えられて安定した織物になリます。
タビーには平織の役割はありますが、完全な平織ではなく踏木1本ずつ模様の緯糸の間に織っていきます。組織図でいうと、1-⑤-1-⑥-3-⑤-3-⑥…というようにです。(⑤⑥がタビー)



組織図-綾織変化組織

タビーは、通常組織図の組織点として書かれません。組織図は経糸と緯糸の交差の状態を表すための設計図であるので、そこにタビーの糸の組織点を入れると、綾織拡大組織の模様自体がわかりにくくなるからです。
試しに、タビーを入れた組織図を書いてみます。



組織図-綾織変化組織

このように、どこが模様でどこがタビーなのかの区別がつかなくなります。これは組織図上のきまりごとですが、タビーを使用する場合は、平織になるタイアップを書き、組織図の横に「タビー使用」(use tabby)と記入して、綾織拡大組織の組織図であることを示すことが基本となっています。

綾織拡大組織は、基本として緯糸で模様を描く織り方です。
実際の織物では、タビーの素材は模様となる綾織の緯糸とは別種の糸を用います。模様の綾織の糸よりも細いか癖のない糸を使用することが多く、経糸と同じ糸で織ることもしばしばです。
緯糸が主導になるために組織点を確かめる意味が薄く、敢えて組織図を書かずに実際の織物の写真を載せている参考書も多くあります。



組織図-綾織変化組織

次に、この組織の経糸の幅を広くします。
経糸1-2-3-4-3-2が1リピートでしたが、幅を広げて、1-2-2-3-3-3-4-4-4-3-3-3-2-2で1リピートで試してみます。その綜絖順とタビー使用の緯糸の踏木順で、組織図を書きます。



組織図-綾織変化組織

緯糸の同じ踏木の段数を増やすためには緯糸のタビーが必要と先程書きましたが、それは経糸にもいえます。
模様を縦に拡大するためには緯糸のタビーが、横に拡大するためには経糸にもタビーが必要になります。経糸のタビーも、模様の経糸の1本置きに平織が入る通し方をします。
経糸のタビーの基本です。
1番綜絖に通した経糸(黒)のタビーは1番の後に2番綜絖に通します(水色)。2番綜絖の経糸(黒)のタビーは2番の手前に3番綜絖に通します。3番綜絖の経糸のタビーは3番の後に4番綜絖に通します。4番綜絖の経糸のタビーは4番の手前に1番綜絖に通します。こうした通し方をすることで、踏木5番6番との連結で平織を織ることができます。



組織図-綾織変化組織

前記の幅を広げた経糸のタビーを含めた実際の綜絖の通し方です。長くなるので1リピートのみ書きます。黒が模様になる経糸、水色がタビーで飛び過ぎている緯糸をおさえる平織の役割をします。



組織図-綾織変化組織

ここで記した「経糸のタビー」は、織物の参考書ではほとんどタビーとは載っていません。タビー使用と書かれている場合、緯糸のタビーを示します。経糸の通し方も、織物の参考書では綜絖順としてそのまま記されます。
前述の通し方でいえば、このように記されます。
少し前にも記しましたが、この図のように綾織拡大組織は主に緯糸で模様を表す織り方なので、経糸である組織点を確認する意味があまりありません。そのために、組織図の升目を空欄にしています。



綾織
綾織

ここで「経糸のタビー」として記した理由は、織物の参考書を基に織った模様の一部を拡大したい、もう少し違う形にしたい、あるいは初めから自分だけの形を描き出したい、といった織物の「基礎」から「応用」へと進むためのほんの少しの手がかりになればと考えたからです。
随分以前に作った綾織拡大組織の織見本帳があります。もう古びてしまっていて、現在とはタイアップの方法、綜絖、踏木の書き方も違いますが、自身には大切な資料です。
織幅60cmを10cmに区切り、10cmずつ経糸を異なる通し方にして、20cmから30cmの長さの間で踏木のリピートを繰り返して織ります。これを12パターン異なる踏木順で織っていくと、綜絖順の違いと踏木順の違いで72パターンの織り方が描き出されます。資料にする時は、綜絖通しの同じパターンを一緒にまとめて、それぞれの織り方に踏木の順番を記号で書きます。
今回、それを基に記しているのですが、こうした自分だけの見本帳を作ると綾織変化組織や綾織拡大組織が確実に実践できます。



組織図-綾織変化組織

その中から、3点の見本とそれを基にした布を比べてみます。
例:1
綜絖順と踏木+タイアップ



綾織

参考にした織り見本帳



綾織

実際の織布
素材 経糸、緯糸のタビー…綿16/2 緯糸の模様の糸…綿30/2の8本引き揃え



組織図-綾織変化組織

例:2
綜絖順と踏木+タイアップ



綾織

参考にした織り見本帳



綾織

実際の織布
素材 経糸、緯糸のタビー…綿16/2 緯糸の模様の糸…綿30/2の8本引き揃え



組織図-綾織変化組織

例:3
綜絖順と踏木+タイアップ



綾織

参考にした織り見本帳



綾織

実際の織布

素材 経糸、緯糸のタビー…綿16/2 緯糸の模様の糸…綿30/2の8本引き揃え
模様にした綿30/2の8本引き揃えは、大管8本に同じ色を巻いてから8本の糸をまとめて揃えて緯糸にしたものです。
綜絖順と踏木+タイアップの欄から、例:1と例:3は同じ踏木順であること、例;2と例:3は同じ綜絖順であることがわかります。例:2はタビーは入っていますが、模様の緯糸を重ねて縦に柄を大きくしていません。

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