織物の組織は、一定のパターンの繰り返しで成り立っています。その繰り返しの最小単位を「完全組織」といいます。
完全組織から、綜絖の枚数や踏木の本数を読み取ることができます。
そのために、まず組織図の組織点(=黒い升目=経糸)から完全組織を探します。
平織の組織図から読み取ります。
最初に、右端の1列と同じ組織点を持つパターンを組織図の縦の列から探します。ここでは、赤線で囲った列が同じ組織点を持っています。この列を、Aとします。
次に、右から2番目の1列と同じ組織点を持つパターンを探します。青い線で囲った列が同じ組織点を持っています。この列をBとします。
続いて、横段の1段目と同じ組織点を持つパターンを探します。やはり、赤線で囲った横段が同じ組織点を持ち、この段をAとします。
同じく横段の2段目と同じ組織点を持つパターンを探します。青い線で囲った横段が同じ組織点を持っています。この段をBとします。
組織点の繰り返しは、AとBの2つだということがここから読み取れます。
縦の列も横の列もAとBの繰り返しなので、組織図の最小単位は縦Aと横Bの2列と2段になります。
この図から、平織の完全組織は太い赤線内のという読み取り方になります。
さらに簡略化した平織の完全組織です。
平織の完全組織の組織点は2点です。この組織点から、綜絖枚数と踏木の本数を読み取ります。
最初に綜絖の枚数を読み取ります。組織点から綜絖の欄に矢印を引きましたが、これはこの組織点=経糸が織られるために必要な綜絖を表します。組織点が2点あるということは、経糸が通る綜絖が2枚必要ということになります。平織の場合は2通りの選択があります。
1のケース、2のケース、矢印の綜絖の升目を、それぞれ黒く塗ります。
次に、踏木の本数を読み取ります。やはり、組織点は2点です。そして、2通りの選択があります。
1、2のケースの矢印の踏木を黒く塗ります。
綜絖、踏木とも、2通りの選択があります。どちらを選んでも、組織は同じです。
上記の1、2のケースから、綜絖1と踏木1を選んでタイアップを読み取ります。「組織図を読む」同様、ろくろ式高機の組織になります。
「組織図を読む」で記したように、ろくろ式高機は踏んだ踏木と連結している綜絖が下がります。そこからタイアップを読み取るために、まず1段目の踏木の組織点を確認します。
組織点から、綜絖を確認します。
左側の綜絖に行きつきます。1段目の組織点は、左側の綜絖に通っている経糸が表に出ていることが読み取れます。このことは踏木と連結している綜絖は、この綜絖ではないことを示しています。
左側の綜絖からタイアップ図へと移動します。この時の位置は、1段目の踏木を踏んだ左側です
タイアップ図は、綜絖に通っていない方の升目を黒く塗ります。
踏木2段目も、同じように組織点をたどり、綜絖からタイアップ図へと進んでいきます。必ず、綜絖に通っていない升目を塗ります。
このようにしてタイアップを読み取り、綜絖の枚数と踏木の本数を確認します。
平織は、2枚綜絖2本踏木で織ることができる組織です。こうして、組織図から読み取ることでわかります。
「組織図を読む」の項で、平織の完全組織として、最小単位をもう少し大きくしました。これは、4枚綜絖という条件があったからです。
平織の完全組織はこの1/2で、2枚綜絖2本踏木です。
ですが、実際に使用している織機の機能を考慮した上で完全組織を読み取るなら、4枚綜絖の場合の平織は左図のようになります。組織のみを読み取るのではなく、織ることを前提に綜絖、踏木、タイアップを読み取ることも大切だと考えます。
「組織図を読む」の項、「踏木と綜絖の連結の種類」で、自身が使用しているタイアップ以外の例を記しましたが、タイアップを動かさないで、綜絖の通し方を考えることもあります。
例として、「踏木と綜絖の連結の種類」から、例:5のタイアップの平織の綜絖の通し方を読み取ります。下図は、例:5と4枚綜絖の平織の完全組織です。このタイアップは、綾織を織ることに適しています。順通しの場合、2、3、4、5番の踏木で綾織を、1番と6番で平織を織れます。
平織は順通しでなくとも織ることができます。
このタイアップで、平織のみを織る時に適した綜絖の通し方を読み取ります。
タイアップが固定されている場合の綜絖や踏木の読み取り方は、どの踏木を踏めば無理なく織ることができるかを考えて踏木を選びます。平織は、2本の踏木で織る組織です。ですから、できれば足を中央に置ける方が織りやすいです。
ここでは、2番と3番の踏木を交互に繰り返します。
3番の踏木を1段目にして黒く塗ります。
3番の踏木に連結していない綜絖と、その綜絖の組織点を確認します。
該当する綜絖を黒く塗ります。
2段目は、2番踏木を黒く塗ります。
2番の踏木に連結していない綜絖と、その綜絖の組織点を確認します。
該当する綜絖を黒く塗ります。
手前から、1-3-2-4の綜絖通しを繰り返して平織を織ることができます。この通し方で平織を織る方法は、順通しの平織と同じくらい知られています。
綾織の完全組織を読み取ります。綾織の組織図です。
同じ組織点を持つ綜絖の縦の列を読み取ります。それぞれのパターンにA、B、C、Dの記号をつけ、リピートを確認します。
まず、Aの組織点のパターンです。
次に隣のBの組織点のパターンです。
続いて、Cの組織点のパターンです。
Dの組織点のパターンです。
踏木の横の列の同じ組織点のパターンを読み取ります。最初に1段目のAパターンです。
2段目のBの組織点のパターンです。
3段目のCの組織点のパターンです。
4段目のDの組織点のパターンです。
綜絖、踏木とも、A、B、C、Dのリピートになります。
綾織は、4列4段の完全組織だと読み取れます。太い赤線内が完全組織です。
さらに簡略化した最小単位の完全組織です。
完全組織から、綜絖を読み取ります。まず、1列ごとに1つの綜絖の位置を決めます。今回は矢印のように綜絖を決めます。
踏木の位置を決めます。
決めた位置の綜絖と踏木を黒く塗り,それぞれに番号を入れます。
綜絖と踏木を基に、タイアップを読み取ります。1段目の踏木の組織点は、綜絖1番と2番に通っています。
1番と2番の綜絖に連結していないタイアップを、1段目の踏木の列に黒く塗ります。
2段目の踏木の組織点は、綜絖1番と4番に通っています。
1番と4番に連結していないタイアップを、2段目の踏木の列に塗ります。
3段目の踏木の組織点は、綜絖3番と4番に通っています。
3番と4番に連結していないタイアップを、3段目の踏木の列に塗ります
4段目の踏木の組織点は、綜絖2番と3番に通っています。
2番と3番に連結していないタイアップを、4段目の踏木の列に塗ります。
綾織の完全組織は、綜絖、踏木とも4列4段です。そのため、単純に綜絖を1-2-3-4、踏木を1-2-3-4のリピートでタイアップを読み取ることができます。
「組織図の表し方」の項で、綾織の完全組織の綜絖、踏木、タイアップ図を記しました。その時の組織図のうち、使っていない3番と4番の踏木を省略した図です。綜絖は同じ1-2-3-4ですが、踏木の位置が違います。これは、実際に織りやすいようにタイアップを並べ替えているからです。上図1-2-3-4の踏木でも綾織は織れますが、足をずらしながら織っていくことに煩わしさがあります。スムーズに織ることは織り間違いを防ぐことにもなりますし、緯糸の打ち込みとのタイミングもわかりやすく行うことができます。この踏木の入れ替えでは、1番踏木、2番踏木を右足で、5番踏木、6番踏木を左足で踏んで、歩くように織り進みます。
ここに記した「織りやすいタイアップ」は、それぞれ違うものです。踏木順が1-2-3-4のタイアップが綾織の完全組織の似ているところから、むしろこの方が織りやすいと考えることもできます。
完全組織から綜絖や踏木、タイアップを読み取り、それを実践していく方法は個々の選択で良いと思います。