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「咲きおりで-猫-を織る」

はじめにおことわり

クロバー手織り機「咲きおり」については、テキストが多く出版されています そこには、たくさんの織の作家の方々が作品を紹介していらっしゃいます また、作品に沿って「咲きおり」の使い方も紹介されています
正式な使い方は、これらのテキストを参考になることをお勧めします
「咲きおり」の機品名称は独自のものもあり、HARUが長年言い慣れてきた名前と違う場合があります また、機という原理は同じと理解していますが、テキストと違う使い方を選択した箇所もあります
できるだけ「咲きおり」の名称、使い方に沿って記しますが、部分HARUの使い慣れた機名称、工程名称が入ることを、あらかじめご了承ください

ノッティングという技法で猫の顔を織ります

ノッティングは、パイル織、ノット織とも言います 他に絵柄を織る時に用いる技法の主なものに、綴織(つづれおり)があります 今回ノッティングを選んだ理由は、猫の柔らかい毛並みをウールの糸で表したかったからです

咲きおり

元になる写真は、これ


咲きおり

この写真を幅約40cmに引き伸ばします さらに、5cm間隔で線を引いて区割をします 奥行きは、約30cm程です


咲きおり

使用する咲きおりは、40cm幅でソウコウは50羽です ソウコウとは、藤色と紫の縞模様の横長の道具で、経糸の開口と打ち込み具の役割があります ここでの50羽は、10cmに50本の糸を使用するという意味です


咲きおり

他に、40羽(緑の濃淡)、30羽(オレンジの濃淡)、20羽(朱色の濃淡)があります 濃淡の区分けは5cm間隔です

最初に経糸をかける時、機の向きはソウコウを据えた位置(ニュートラルポジション)を手前にします ソウコウの手前にある棒=バックローラーについている金属製の棒=バックバーを少し押し出すと、カチッという音がして固定されます さらにストッパーをギアに固定して、バックバーの位置をソウコウの高さと同じにします
今回の経糸は、絹糸を使用します チーズ巻の糸なので、糸巻きはせず、このままテーブルの下に置いて引き出します
引き伸ばした写真が絵柄になります 経糸の長さは、絵柄の30cm+織り始めと織り終いの50cm分、さらに織縮み分をを足して、90cmにしました
(注 ノッティングは経糸を括りながら織るため、織縮みが通常の織物よりも大きくなります 同じ条件であれば1mの経糸を用意した方が楽に織れます)


咲きおり

最初に、経糸に決めた糸を90cmあらかじめ切っておきます その糸の端をソウコウの手前のバックバーに結びます 織幅は40cmでソウコウと同じですから、結んだ糸をソウコウの一番端の溝に差し込みます 溝に沿って入れると、微かにカチッとという手応えを感じます この音を確認して糸を伸ばしていきます


咲きおり

付属品で木の棒が付いています(ワープスティック) この棒を立てる穴が板(ワープボード)に幾つかあります まず、ソウコウの真前中央に棒を立てます 経糸はこの中央の棒を必ず通過して、左右に曲がります ここにかけることで、40cm幅の経糸全体の誤差が縮まります 90cm分の糸が余裕を持ってかけられる場所に棒を立てて、片道の経糸の道筋を決めます


咲きおり

90cmの糸に、チーズ巻の経糸を結びます 結んだ経糸を折り返しの棒からソウコウに向かって、同じ道筋を通して戻します ソウコウまで着いたら、先程差し込んだ溝の隣の溝に糸を差し入れます カチッと感じたら、この糸をバックバーに輪にしてかけます 輪にすると、行きと帰りで糸の返し方の上下が逆になりますが、方向に逆らわず棒にかけて、またソウコウの溝に経糸を差し込んでいきます


咲きおり

咲きおりは、1本ずつ整経します 90cmの長さを行きつ戻りつ、整経しながらソウコウに経糸を差し入れていきます

ソウコウの溝に糸をはめても外れることがあります この機の特徴ですが、外れやすいことが長所であり難点です 外しやすいことの良さは、織っている途中で糸を入れ替えて経糸を変えることができます 意外と簡単にできるので、結構楽しいです 逆に、外れやすいために外れた経糸があらぬ方向に飛び出して、他の溝に入ってしまったりすることもあります このことは注意する必要があります


咲きおり

整経が終わりました

咲きおり

経糸の折り返し棒の手前をビニール紐で結んで、木の棒を板から抜きます 咲きおりの前後の位置を逆にします


咲きおり

ソウコウが奥に移動して、この位置で織ります
経糸を輪にしてかけたバックバーを奥に押します カチッと音がして、棒が後ろの木=バックローラーに付きます


咲きおり

バックローラーの右側にギアとストッパーがあり、手で回して経糸を巻いていきます この時、手前の(織前の方)のギアとストッパーを付属品の面ファスナー(オレンジ色のマジックテープ)で固定して動かないようにします


咲きおり

(注 この時に、ソウコウを回転させ、1本交互に経糸を交差させてあぜ棒(テンションバー)を入れる工程がありますが、今回使用した経糸は丈夫で比較的滑りやすい糸でしたので省略しました また、経糸をバックローラーに巻く時機草の紙を入れますが、今回は経糸の長さが短かったので使用していません)
織前の棒=フロントローラーの5cm程前で巻き取りを終えます 折り返しの結んだ輪を切ります ビニール紐を解く前に切ると確実に切り離せます


咲きおり

ソウコウを定位置から手前に移動させます この時、糸が抜けないように注意します


咲きおり

フロントローラーには、対称の位置に2本の溝が入っています 経糸をフロントローラーに留めるホルダー(オレンジ色の半円柱のもの)をはめる溝です この溝を機と平行の位置にしておきます ホルダーには2つの幅のものがありますが、その時々で使い分けます ホルダーの片方の端には、ノコギリのような歯型がついています この歯型でソウコウから流れている経糸を梳かすようにフロントローラーに寄せます ホルダーの幅と糸の幅を同じにして、歯型にとらえるととやりやすいです

ホルダーで経糸を固定する時、均一の張りにする必要があります ホルダーで梳かした経糸を引っ張り、まず歯型で糸をフロントローラーの奥側の溝に力を込めてはめ込み、そのまま手前側の溝にホルダーのもう片方をはめ入れます この時の力の入れ方の違いが張りの強弱に影響します また、ホルダーは経糸の張りに負けて外れることもあります 根気よく繰り返し行います


咲きおり

経糸のはめ込みが終わったら、ソウコウを定位置に戻します ホルダーが外れないことを確認するために、経糸を数cmフロントローラーに巻きます ホルダーが外れやすいのはこの時です バックローラーから経糸を少しずつ出し、ゆっくりとフロントローラーに巻いていきます フロントローラーに経糸が直接重ならないように紙を入れます この紙はカレンダー紙を使っています 特に厚紙でなくとも構いません また、最初の一巻きのみで充分です

これで、経糸の準備が終わりました

咲きおり

咲きおりは、三角柱のソウコウを回転させて経糸を開口させて緯糸を入れて織ります ソウコウには右に青の矢印、左に赤の矢印がついていて、これに従って緯糸を入れていくと入れ間違いがありません 咲きおりを織る時には、板杼を使用します
定位置=ニュートラルポジションに置かれたソウコウを、


咲きおり

青の矢印が見えるように手前の溝=スイングポジションに傾けて乗せます そうすると、経糸が1本交互に開口します


咲きおり

開口したところに緯糸をいれます 最初の織り始めの糸は、経糸と同じ糸を使用しました


咲きおり

そうして両手でソウコウの左右についているつまみを掴み、傾けたソウコウを機と平行に戻してから、織前に向かって動かします 打ち込むというよりも、緯糸を押さえるという力加減で緯糸を押します ソウコウを両手で同じ力で動かさないと緯糸が曲がるので注意します


咲きおり

ソウコウをニュートラルポジションに戻し、今度は赤い矢印が見える面に傾けてスイングポジションに乗せます

そして、同じように緯糸を入れ、ソウコウを織前に動かして緯糸を押さえます この繰り返しです
最初の織り始めの平織は、約3cm程度です


咲きおり

絵柄になる引き伸ばした写真に、わかりやすく輪郭を濃いめに書きます ノッティングの柄合わせは、通常経糸の下に基になる絵を留めて絵を透かすようにして織っていきます わかりやすく輪郭を濃くするのはそのためです

咲きおり

ノッティングに使用する糸を決めます
今回は、色糸で販売している糸を多く利用しています ノッティングでは、大抵複数本の糸を引き揃えて束を作ります
猫の顔と体には生成りの糸8本の束(写真左から2番目)
若干影をつける部分には、同じ生成りの糸7本とグレーの糸1本で束にします(同3番目)
まったくの白猫で、むやみに影をつけると柄に見えてしまうので、できるだけ色は入れないようにします
顔と体の境の顎の線のみ、グレーの糸8本を使用します(同4番目)
また、鼻のピンクには太めの紡毛糸の3本束で少しずつ色が違うピンク色を使います(同5番目)
耳のピンクはもっと薄い色で、糸もやや細く4本束(右から2番目)
瞳の糸のみ絹糸の極太糸で、タマネギのアルミ媒染で染めた糸を3本の束で使います(右端)
ちなみに、写真の左端の糸は経糸に使用した絹糸です

背景は写真とは関係なく無地柄にします 7本の糸の束ですが、黒とグリーンの糸を少しずつ本数を変化させてグラデーションを見せたいと思います


咲きおり

糸は、束の分だけ玉巻器で巻いて用意します コーン巻の糸が7つも8つもあればその必要はありませんが、大抵の色糸は2巻程しか持ち合わせていませんので、必要分だけ巻きます

咲きおり

糸の束の作り方です
必要な本数の糸を引き出し、親指と小指で八の字に交差させます 手のひらの上に交差した中心がくるように巻いていきます


咲きおり

あまり多く巻くと経糸に括り付ける時やりにくくなるので、手のひらで軽く握ることができるくらいがいいと思います 巻き始めの端は長めに外に出しておき、巻き終わりの端を交差するXの部分に巻き付けます


咲きおり

使う糸は巻き始めの長めに出しておいた方で、抵抗なくスルスルと出るようならいい案配です


咲きおり

束の糸は、まとめて作っておきます この糸束をバタフライといいます

ノッティングのやり方
混ませる密度によってやり方は違いますが、今回は動物らしい毛並みを出したいので、括り付けの回数を多くします 経糸2本を1組として繰り返します


咲きおり

最初の出だしです バタフライの束を左端の経糸2本の間を割って左端の糸の下をくぐって左方向に外に出します(写真では左方向にバタフライがあり、下に見える糸は出だしの糸の端です)


咲きおり

左に出したバタフライを右に方向転換し、くぐらせた1本目の糸の上を渡して、2本目の糸の外側から経糸を割って下に入れます 経糸の下に入れた束を、最初にくぐらせた2本の間から右方向に表に出します 2本の経糸に糸束がシンメトリーになって括り付けられます


咲きおり

このまま、軽く結びます これが出だしになります


咲きおり

次に、毛足の長さに見合う物差しや棒を用意します 丈夫な厚紙でも構いません(曲がらないものを)ここでは、竹の物差しを使います バタフライの束を物差しに上から半回転させます


咲きおり

最初の出だしの2本の糸の、隣の経糸2本の間にバタフライをくぐらせて、同じように左方向に出し、右に向きを変えて2本目の経糸の外側から下に入れて、2本の経糸の間から表に出します


咲きおり

これを繰り返していきます 必ず2本の経糸に括り付けていくので、経糸が2本ずつ割れたようになります


咲きおり

絵柄に合わせて色を変えます 今までのチャコールのバタフライの糸を切り、生成りの糸に変えます 糸を変える時、最初の出だしと同じように括ります 最初の一段目は、直に絵柄と照らし合わせます


咲きおり

同じ要領で40cm幅を物差しにバタフライを括っていくと、写真のようになります


咲きおり

一段を終えたら、物差しを抜きます 物差しに糸をかける時に余分な力を入れると、抜きにくい場合があります 経糸を押さえて一気に物差しを引き出すと、経糸がずれずに速やかに抜けます


咲きおり

ノッティングの結び目のムラを整えるために、ソウコウで一段目を押さえます


咲きおり

さらに結び目が動かないように固定するために、織り始めに織った絹糸で2段平織をします


咲きおり

ノッティングの結び目が経糸と緯糸によって固定された様子です


咲きおり

ここで、絵柄の写真を経糸の下に敷きます 織り始めの平織の部分に写真の紙を待ち針で留めます これから最後まで、この写真の色と輪郭を基に作業を進めていきます


咲きおり

最初の3段までは同じ物差しを使用していましたが、4段目から幅の違う2通りの物差しを使い分けます 背景の方は細い物差し、猫の方は今までの物差しを使います


咲きおり

幅の違う物差しを使う場合、背景の部分が終わった時点でいったん細い物差しを抜き、猫の部分になったところから改めて幅の広い物差しで括り付けをします


咲きおり

今回は、写実的な絵柄にはしません 非常に細かい点描のようなノッティング技法のタピストリーもありますが、そのような絵を試みるためには経糸の密度がもっと細かくなければできません さらに、糸の色も多彩になり、細い糸を少なめに束ねた方が繊細な柄ができます 今回は絵柄の細かさや色数の多さよりも、ノッティングの毛先の段差の違いで猫の輪郭と毛並みを表現したいと思います
先程記したように、白猫なのでうかつに色を入れると柄猫になってしまいます が、顔と体の区分けはやはり必要なので線状にグレーを入れていきます


咲きおり

一見ヒゲのように見えますが、気にしないで進めます 猫は、口元と鼻の頭がほとんどくっついた顔をしています 口の割れ目の線が鼻に繋がっているようにみえます(実際は違いますが) マンガチックに誇張はせず、写真のままに進めます


咲きおり

物差しや織った糸、経糸のせいで絵柄が見えにくくなることもありますが、今は顔のどの辺を織っているかを確認しながら進めます ノッテッィングは解く作業が面倒で、やり直しがききにくいためです 解けないことはないのですが、結び付けているために解くのに時間がかかります
そろそろ、目の部分に入ります


咲きおり

実際の猫はこんな目の色はしていませんが、「目は口程に物を言う」などの例えのように、やはりグッと引き締まった顔にしたかったので、目のみ絹糸を使いました
目や鼻、口のように曲線で表したいものを織物で行う時、細かく糸を変えていきます 物差しに巻かずに1回のみ括ったり、2つの色を1回ずつ交互に繰り返します 顔の部分ではほとんど物差しは使いません あらかじめバタフライから糸束を数cm切り、経糸に括り付ける方が楽な時もあります そのため、物差しを用いない部分は切りっ放しの糸が多くなります これは、後ほど整えます
また、括り付けた直後に模様が歪んでいることがありますが、後で修正できますから気にせず進めます
口、鼻、目と、不細工ですが、顔らしくなってきました


咲きおり

ノッティングは進みが非常にゆっくりです なので、経糸の巻きも他の織物に比べて少なくなります
咲きおりでは、大きなデザインの絵は向きません フロントローラーに巻くことが難しいからです(他の機でも同様ですが、ノッティング用の器具があることと男巻の余裕が大きいためにある程度は許容されます)
ですが、ソウコウで括り付けた糸を押さえるための平織ができにくくなってきたので、少しだけフロントローラーに巻きます バックローラーのストッパーを緩めます


咲きおり

フロントローラーのギアを巻きます 必ず、少しずつ巻いていきます


咲きおり

耳に入りました 特徴ある耳介で猫らしくなります


咲きおり

顔全体が整いました すでに絵柄の写真は見えなくなっています


咲きおり

背景の部分のみ括り付けます その上で、織り終いの平織を織り始めと同じ糸で織ります

これで、ノッティングが終わりました

咲きおり

織物を外します
フロントローラーのストッパーを外して、経糸全体を緩めます


咲きおり

バックローラーとソウコウの間の経糸を切ります


咲きおり

ソウコウを外します


咲きおり

ノッティングは仕上げは(水通しや縮絨のこと)しません 緯糸が解けるので、ただちに経糸の始末をします 今回は、簡単な玉結びをしました

フロントローラーのホルダーを外し、同じように玉結びをします おおよそ絵柄と同じ大きさの「猫」が、咲きおりを離れました

咲きおり

織り上がったばかりの猫のタピストリーです ごらんのように、不細工です


咲きおり

ちなみに、裏側です こっちの方が猫らしい


咲きおり

ノッティングの始末には、おおまかに2通りの方法があります 1つは、物差しで巻いた糸の束を切る方法 もう1つは切らずにループのままにしておく方法です
何度も繰り返していますが、今回は猫の柔らかい毛並みを表したかったので、猫の体と顔は巻いた糸を切って、いかにも動物の毛並みっぽく仕上げたいと思います そのねらいから、背景の無地柄は対照的に切らずにループのままにしておくことにしました
猫の体のループ状の糸を鋏で切ります ループの山の部分を切っていきます 経糸の密度に対して、混ませ気味のノッティングだったので、ややもすると切り忘れがあります 引っ張るように切ると抜けることがあるので、軽い調子で多少乱雑になってもすべて切ります


咲きおり

目や鼻、耳も、とりあえず切ります 目は糸質の違いもあり繊維のカスが散りますが、なるべく白い糸につかないように拾っていきます


咲きおり

すべてのループをカットしたら、毛並みを整えます
猫の顔で、一番高いのは鼻です ですが、同じ物差しで巻いてきたので、顔の糸自体の長さは同じです 同じ長さの糸で顔の凹凸をつけるには、毛の切り方を工夫します 鼻の高さと丸みを出すように、鋏で切りそろえます まず糸を立たせて、鼻のピンクと周りの白い糸の輪郭をはっきりさせます 鼻とその周りの顔との段差をつけるために、影になる方の白い糸をやや深めに切ります 写真では左側になります あまり深く切りすぎると結び目が見えてしまうので、その辺りの加減は丁寧にします 鼻を境に左側は深めの段差に、鼻自体は丸く柔らかい半円状に、頬から目元にかけてはなだらかな傾斜をつけます レリーフのような感覚で顔を作っていきます


咲きおり

顔と体の境にしたグレーの線ですが、思い切って深めに切ります 顎の段差がある方が顔の輪郭がはっきりしますし、影のつもりでつけたグレーの色が柄に見えないようにするためもあります 顔の方の糸は急な傾斜で、体の方は緩い傾斜で毛を切っていきます
猫の耳介は本来はとても薄いものですが、ここではピンク色の耳介の中と周りの白い毛の段差をつけて、猫らしい耳を作ります 白い毛は切りそろえる程度にして、中のピンクの糸を短くします 耳の鋭角さを出すために、背景と耳介の境を際立たせます 猫の額は、耳介とは逆に背景に向かってなだらかに傾斜をつけます


咲きおり

目に使用した絹糸を立たせるために、竹串で糸を選り分けます 絹糸は柔らかいので、ウール糸よりも丁寧に立たせます 細かい色糸の括り付けをやったために、糸が絡み合ってしまいました 混ざった糸をひとつひとつ本来の場所に戻していきます


咲きおり

目の周りの毛と眼窩の段差をつけます 目の周りの毛はほとんど切らずにそろえる程度にします 目の中は深く切り込みます 眼球は縦長に丸みを帯びさせるようにします


咲きおり

全体に目鼻立ちが出来てきたら、飛び出した糸を切りそろえておきます
背景のループの糸端も目立たないように切ります


咲きおり

体の毛は、あまり整えないでおきます 櫛で梳かす程度にする方が猫の毛並みらしくなります


咲きおり

顔つきは、毛の向きによってだいぶ変わります 固着させる訳にはいかないのですが、そのかわり気ままに触って時々糸を整えてやる、猫の世話をするような楽しみがあります


咲きおり

最後に、ヒゲをつけます これは、てぐす糸を使います 裏面のウール糸とウール糸の間の平織の筋から口や鼻の周りに見当をつけててぐす糸を刺し、表に出たところで程よい長さを決めます 裏面のてぐす糸はテープで留めておきます


咲きおり

実際の猫のヒゲはかなり多いのですが、あまり何本もつけると却って滑稽に見えますから、左右に3、4本程度が妥当かと思います


咲きおり

これで、猫の毛並みの調整が終わりました 今回柔らかい糸質のウール糸を使用したので、時々毛並みを整えてやります


咲きおり

出来上がった猫(ノッティングの絵柄のことですが、省略して-猫-と記します)をどう飾るかは、その時々の気分です 最初は長く余った上下の経糸に市販の丸棒を結んで小さなタピストリーとして飾る予定でしたが、少し気分が変わって猫の周りに額のように布を貼って飾ることにしてみました
用意したものは、厚さ1.5cmのダンボール紙 大きさはA2


咲きおり

60cm幅の自作の絹布 それに猫のノッティングです


咲きおり

額に使用する絹布は経縞で、縞の柄ゆきで猫を囲むことにします そのために、猫の経糸の上部の玉結びの先の糸が邪魔になりそうだったので、短く切りそろえます


咲きおり

実際に猫をダンボール紙の上に乗せて周りの幅を決めます 布の量に限りがあるので、今回は表側のみの貼付けにします 周囲約6cmの幅を空けてそこに布を貼ることにします 実際には6cmぎりぎりに布を貼ると、猫と額布の境目にダンボール紙が見えてしまうかもしれないので、ダンボール紙の端から7cmに額布を貼ることにします


咲きおり

寸法を測り、カッターでダンボール紙を切ります


咲きおり

カットしたダンボール紙に、猫を置いてみます


咲きおり

経縞の絹布をダンボール紙にあててみます 縞は4色の繰り返し柄で、柔らかい布質ですが、やや厚みがあります


咲きおり

上下は縞を横にして端から端まで渡し、左右は経縞のままにします 猫を縞が囲んでいるようにします 絹布はロックミシンで裁ちかがりをします 4枚の布ができました


咲きおり

この布で猫を囲んでみます 大きめに裁ったのですが、サイズはいいようです


咲きおり

今回は、水性ボンドで布を貼ります 木工用のものですが、水性なので水で薄めて使いやすくなり重宝します 布の色が変質することもありません ただ、水で薄めすぎると接着力が弱くなるので、数滴程度がいいようです ここでは、指先を濡らしながら薄めました


咲きおり

最初に、表側にボンドを塗ります 刷毛を使うことも考えましたが、指でやる方が早いので指先で絹布を貼る場所にボンドを広げます


咲きおり

速乾性ではないですが、あまりのんびりしているとやはり乾くので、すぐに布を貼ります 布は伸ばしすぎず、弛まないように、適度の張りを保ってボンドに接着させます


咲きおり

同じように、左右を貼ります


咲きおり

ダンボール紙を裏返して、裏にもボンドを塗ります そうしてダンボール紙の厚みを覆うように側面を囲います


咲きおり

しばらく乾かして再び表側に戻し、上下の位置にボンドを塗ります 左右の絹布に数cmかかります 布には紙に塗るよりもボンドの浸透が鈍いので、硬めに薄めていきます


咲きおり

こうして上下の布を貼ります


咲きおり

左右の時と同じように裏面も貼ります このまま、しばらく乾かします


咲きおり

布に厚みがあるので、四隅の始末はボンドではきれいに仕上りません ここのみ、針と市販の縫い糸でまつり縫いをします 角の布を丁寧に折り畳み、待ち針で留めます


咲きおり

ボンドで固まった箇所もあるので縫いにくいのですが、短めの縫い針で縫うとできました


咲きおり

これで額の布を貼り終わりました


咲きおり

額に猫を取り付けます 方法にやや迷いましたが、単純にダンボール紙に猫の絵のふちを縫い付けることにしました とはいえ、1.5cmの厚さは手応えがあります 最初は一番太い刺繍針でダンボール紙を刺して縫おうとしましたが、うまく垂直に針が刺さらないので、千枚通し(ここではドライバーセットにある尖ったものを使用)であらかじめ穴を空けて、そこに針と糸を通すことにします 糸は経糸に使用した絹糸を2本どりにします


咲きおり

約2cm感覚で縫い付けていきます 縫う場所は猫のノッティングを施した面に刺します 織り始めと織り終わりの平織の部分は目が粗く弱いので避けました


咲きおり

上下のふちは2本どりの糸で続けて縫い付けます 左右のふちは、5、6カ所に結び目をつけて補強します ノッティングの端に2本どりの糸を刺し、ダンボール紙の裏側で結びます


咲きおり

これで、一応猫は取り付けられました 写真のように裏側はダンボール紙の地肌と縫い取りの跡があります


咲きおり

あまりきれいなものではないようです ですので、裏にも絹布を貼ることにします やはり自作の布です 縫い取りの跡が充分覆えるくらいに裁ち、ふちをミシンで縫います


咲きおり

大きさを再度確認して、ボンドで貼ります 裏側のことを計画していなかったので別の布を使用しましたが、額と同じ経縞の絹布であれば良かったかと、少し反省です


咲きおり

これで完成かな、と眺めました と、どうしても猫の織り始めの平織のグレーの部分が気になります 縞の線を消してしまっていることに気づきました 前述のように、ノッティングは水通しなどの仕上げはしません このまま切ってしまうと、糸が解けてしまいます そこで、猫の絵ぎりぎりに平織の部分をかがります


咲きおり

2cm程度の粗いかがりです 経糸と同じ糸なので見えにくいですが、緯の線はまっすぐに揃えます


咲きおり

かがりの糸のすぐ上の緯糸に沿って鋏を入れます


咲きおり

切り揃え、緯糸のほつれを抜いて、額と猫の間にボンドを摺り込みます 今回、ボンドが大活躍です


咲きおり

そのまま乾かし、今度こそ完成です 取り付けの間にも猫の毛並みが乱れたので、丁寧に直します


咲きおり

気になるのか、本物がやってきました(やらせではありません)
似ているでしょうか?


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