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織物の工程「織り終い」

千巻箱に巻いた経糸の終わりが間先に上がり、千巻布が綜絖枠に迫ってくると、織る作業は終わりに近づきます ここでは、どのように織物が終わるか、織り終わった高機の手入れについて記します

織り見本の作成

織り

残り少なくなった経糸の最後に、保存用の「織り見本」を織ることは、織を続けていく上で大切なことです 写真に記録するという手段も有効ですが、糸なりの出方、実際の色合いは実物を見ることで蘇ります ご縁があり、作品が作り手の元から離れることもあります もう1度あれが織りたいと思った時、僅かな布端があれば役立ちます ですが、本織りの後に織るものですから長さはとれません 織り見本を織る余裕がない時もあります

織り見本の分は、経糸の長さに入れないのが普通です 例外はあるでしょうが、経糸の全体量を無駄なく計算して、ぎりぎりで糸を使用していることが多いからです 千巻布が綜絖枠に迫るにつれ開口も悪くなり、筬柄の吊り棒を綜絖枠の側まで下げて織ることも度々です 開口が悪くなる理由は、千巻布のロット棒に括り付けた経糸の長さが短くなったために、開口の角度が狭くなるからです そのために、織り見本は5cmも織れたら幸いです

本織りの後、織り見本以外にも本織りで使用しなかった糸で試し織りをしてみる手もあります 遊びのつもりで2、3cmでも違う緯糸で織ってみると、新しい発見があって楽しいものです。

製織終了

織り

織り上がった後、男巻に巻いた織物を外します
上ストッパーのバネをネジから外すと、ストッパーがギアから離れます


織り

ギアの突起を押さえたまま、男巻に巻いた布を充分緩めます 緩めた状態で、鋏で経糸を切ります 鋏の入れどころは織物の目的で違います マフラーの時は房の分を含めて経糸を切りますし、服地はむしろ余分な糸は邪魔になるので織り終いの近くに鋏を入れます 筬柄の吊り棒を綜絖枠のぎりぎりまでさげて織った時などは、4枚の綜絖枠の後ろ側や千巻布の側で切ることもあります


織り

ギアの突起を親指で押さえながら、手で男巻を回して織った布を戻します 巻いた織布をすべて戻すと、男巻布とロット棒に結び付けられた経糸の端が出てきます マフラーやショールの場合、男巻に結び付けた経糸を房にすることがあります その時は、ロット棒を男巻布と経糸の結び目から抜きます ひとつひとつ結び目を解くよりも早いことと、機から下ろしてから結び目を解いた方が解きやすいということもあります

房の必要のない織物は、結び目と織り付けの際(きわ)を切ります

機のメンテナンス

織り

千巻箱から綜絖、筬に残った経糸は、織ることができなかった糸です 千巻箱に千巻布を巻き直して、千巻のロット棒を端から抜くと、織り捨ての経糸を簡単に取ることができます この際、千巻布は経糸の繊維クズで汚れているので、払い落とすか、掃除機をかけて取り除きます

織り終わった時点で筬を筬柄から外します また、筬柄の上部裏の蝶ネジはなくしやすいので、緩めたままにせずに空の状態でも締めておきます


織り

高機は、半年に1度はメンテナンスが必要です 購入直後はしっかりした組み立てで届きますが、2〜3年も使い続けていると次第にネジが緩んだりイタリアンコードが解けかかったりします 時には、気づかないうちに小さな部分を壊していたりすることもあります ネジひとつでも部品の緩みは機の歪みになり、経糸を均一に張れない原因のひとつになります 購入した際に必ず工具が付きますから、点検は欠かさないようにします


織り

手入れをせずに使い続けたり、使わずじまいの機は、踏み木を踏むと軋む音がするようになります これはろくろ棒が回転する時の軋みの音です 上ろくろ棒と下ろくろ棒には金属の芯棒が通っていて、これが回転軸になります この金属棒を置く機の溝にロウを摺り込むと、こすり合う際に出る摩擦が消えます 軋む音が消え、回転が良くなります


織り

クマクラ織機の高機は、<ろくろ式>と呼ばれるタイプです

ろくろ棒、綜絖枠、踏み木は、イタリアンコードという紐で繋がっています イタリアンコードの結び方をいかり結びといい、機の部品の結び方すべてに共通してます この結び方の利点は調節がしやすいことです いかり結びは固く結ぶのではなく軽い結び方を2、3回間を置いて結び、紐の先をイタリアンコードの強い撚りを割って中に差し込みます イタリアンコードの強度と滑りにくさのために、解けることは滅多にありません それでも長年の使用のうちに、イタリアンコードの撚りが開き、抑える力が緩むこともあります 特に、踏み木のイタリアンコードにそれが多いので、調整は欠かさず行います


織り

踏み木の緩みを直す時は、最初に2本の下ろくろ棒の2ヵ所を紐で固定し、さらに綜絖枠の上部を4枚まとめて紐で固定します これをせずに踏み木のイタリアンコードだけを調節すると、綜絖枠やろくろ棒に歪みが出ます 踏み木の適切な角度は、綜絖枠の下ロット棒と経糸が接触しない範囲です 適度な開口になるように、踏み木の高さを調節します 踏み木の角度の調節は、決まった道具で角度を一定に保つようにします 踏み木と床の間に高さを保つ物を挟んで、常に一定の角度にイタリアンコードを調整します

イタリアンコードのいかり結びは、直す時でも完全には解きません 緩くなったイタリアンコードの弛みは、割れ目に挟んだ先端の方へと移動させて結び目を動かします 逆に緩めたい時は、割れ目に挟んだ方を緩めて結び目を少しずつ伸ばしていきます この時、必ず床と踏み木の角度を保ってイタリアンコードを調節します イタリアンコードは耐久性のあるものですが、長い年月での劣化はあります 撚りの割れ目に挟んでも固定されないような状態であれば、イタリアンコードを交換します

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