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織物の工程「整経」

整経(せいけい)は、文字の通り経糸(たていと)を整える工程です
必要な糸本数と長さを準備する、 織物の工程で大切な作業です 丁寧に進めてください

<大管立て>と<整経台>

大管立てと整経台

大管立ては、経糸の並び方に合わせて糸巻きをした大管を立てる道具です
大管立てには、上段下段合わせて大管が32本立てられます 前斜めに傾斜した状態で使用します
整経台は、経糸を引き揃えるための枠です  大管立ての前に設置します

整経台 整経台

整経台の上に並んでいる棒は、鉄棒(かなぼう)といいます 整経台に固定されている鉄棒(上)と経糸の長さを調節する調整棒(下)があります 調整棒は蝶ネジとワッシャーで付け替えます
整経台の横の長さは、約1.5m、奥行きは約50cmです この整経台は、最長27.6mの経糸を整経できます

ふたつの整経の違い

整経の方法は複数あり、そのやり方で整経台の使い方も違います

ひとつは「輪整経(わせいけい)」です
整経した経糸を切らずに輪の状態で次の工程に進みます 経糸のずれが少なく、均一に張りやすい特徴があります 経絣の整経に適しています

輪整経は、経糸本数が偶数になります 大管立ての上段下段に縦1列大管を立てて1列2本ごとにあぜを取るか、上段のみ下段のみを使用して大管1本であぜを取るかしますが、いづれにしても偶数の経糸の配列になります あぜについては後述します 
例えば、上段…A、下段…Bの縦1列の配列で整経した場合、経糸はA&BーA&B…が続きます 必ずAとBの2本の経糸の組み合わせになり、この繰り返しになることから1本や3本などの奇数の経糸を整経する時には不向きです ただし、まったくできないことはありませんが、非常に面倒な気の使い方をすることになります
奇数本数の縞を整経する時は、「普通の整経」を選びます
普通の整経は、1本、3本などの奇数の経縞の並び方を比較的自在に整えられます ただ、整経終了後、経糸の両端を切るために、千巻工程で経糸の張りを整えながら結び付ける作業が必要になります この作業は千巻箱を押さえながら進めるために、体の負担も大きくなります

ふたつの整経の選び方は、ひとつは経糸の配列がどちらの整経に向いているか もうひとつは織機の種類によります
織物倶楽部で使用している織機では、大忠木工所の高機、レバー式卓上機は普通整経の方が向いています これらの織機は千巻箱を織機につけたまま千巻工程を行うので、輪整経では経糸の長さが不均等になり、整経直後に経糸を揃えて切る普通整経の方がきれいに結び付けられます こうした織機は多くあります 「普通」という名称があることから普通整経の方が一般的であると思います
整経工程は、その後の工程に大きく響く大切な作業です 経糸の長さ、本数、張り、糸1本1本の弛みも後の作業の差し障りになることがあります その分慣れるまでに時間がかかりますが、どちらの整経もひとつひとつ丁寧にこなしていけば決して難しいことではありません

大管立て

写真の大管は、糸種が1種類で無地の織計画です こうした場合はどちらの整経を選んでも差し支えありませんが、整経長が7mと長いために、千巻作業が楽に行えるように輪整経を選びます

輪整経の計算の方法

例として、以下の計画で計算します

鯨寸間20羽の丸羽
織幅
7.9寸 = 約30cm (鯨尺とcmの換算の仕方は、鯨尺とcmの物差しを比較すると一番わかりやすいです)
経糸全本数
20羽 × 2(丸羽)× 7.9寸 = 316本
大管本数
10本

輪整経は、始点→折り返し点→始点→折り返し点→…と整経台を往復します この往復を整経1回とします 
まず、大管本数 × 2倍 = 整経1回(1往復) の経糸を計算します 
その上で、経糸全本数 ÷ 1往復の本数 = 整経回数(往復の回数) の計算をします
例の場合、大管の本数は10本です 始点から折り返し点まで10本の経糸、折り返し点から始点まで10本の経糸
1往復で 10 × 2 = 20本 の整経になります この20本の経糸が整経1回の本数です
経糸本数は316本です
316本 ÷ 20本(1往復の糸本数) = 15.8回 整経回数は15.8回で、割り切れない計算になります
その場合は、まず1往復20本の経糸を15回整経した本数を求めます
20本 × 15回 = 300本 15回整経をした段階で、300本の経糸が整えられます 
必要な経糸の本数は316本ですので、
316本 - 300本 = 16本 あと、16本の糸本数が不足しています 
前述のように、整経1回は1往復のことなので、
不足糸本数 ÷ 2倍 = 不足分に使用する大管の本数 
16本(糸) ÷ 2 = 8本 で、8本の大管を使用する計算です
以上、例の計画の輪整経の整経回数は、10本の大管で15回(15往復)+ 8本の大管で1回(1往復)の追加です

整経台を往復する長さと始点の決め方

整経台

写真の整経台は、クマクラ織機製です
整経台の右側に9本の固定の鉄棒(かなぼう)、左側に縦2列の固定の鉄棒があり、左側2列の外側に4本、内側に8本ありますが、輪整経では、外側の1番手前の棒と内側の8本の棒を主に使用します 長さに応じて外側の1番奥の棒を使うこともあります  右側の9本の鉄棒は整経の長さによって、ほとんどの場合で使用します


整経台

整経台の左側手前の鉄棒と右側手前の鉄棒をまっすぐに結んだ長さは、約1.5mです 整経の長さによって整経台の枠に沿って往復する場合もありますし、整経台を横切って左列の鉄棒と右列の鉄棒を往復する場合など様々です
折り返し点の鉄棒は、左側の最前の鉄棒です ここを基点にして、必要な整経の長さの通り道と整経の始点の鉄棒を探します

例として、必要な整経の長さを7mとします
整経長7mを、整経台の横の長さ1.5mで割ります
7m ÷ 1.5m = 4.666…
4.666…の4は、1.5mの整経台を4回横切るということです まず、1.5mの整経台を4回横切ることは決まりました
1.5mを4回横切ると、1.5m × 4回 = 6m となり、7mには1m不足します
1mの長さを固定の鉄棒で測ることができない時、調整棒を整経台に取り付け、1mの不足分を補います


整経台

整経台の固定の鉄棒や調整棒の位置を決めるには、必ず手前左側端の固定の鉄棒を基準にします この鉄棒は、経糸が何mあっても必ず折り返し点になります 今回のように長い整経長の場合、整経台の手前の左端と右端の鉄棒は必ず通過する糸道です この一辺をまず4回のうちの1回分と数え、整経台の横を大きく行き来する道を決め、その上で調整棒の位置を決めます

整経台には、この調整棒を取り付ける穴が数カ所あります ぴったりと1m足せる長さに調整棒が取り付けられるとは限りませんが、例えば調整棒の穴が90cmと110cmの中間にある時などは、長めに110cmの穴に調整棒を取り付けます この取り付けた調整棒が、整経の始点になります

始点の鉄棒は整経台の奥の方、あるいは大管立てに近い側にする方が整経がやりやすいです 7mの整経の場合、大管立ての下に調整棒を取り付け、ここを始点にして左側の1番奥の固定の鉄棒までが約1m そこから右列の奥から2番目の固定の鉄棒までが1.5mの1回目 さらに左列内側奥から5番目の固定の鉄棒で1.5mの2回目 そこから右列1番手前の固定の鉄棒までが3回目 そして、左の1番手前の折り返し点までが4回目です 輪整経は始点の鉄棒と折り返し点の鉄棒を往復しますが、整経の長さは始点から折り返し点の糸道になります

左側と右側の固定の鉄棒をすべて横断して整経しても経糸は斜めに整経されます 今回のように4回の糸道だと斜めの角度が大きくなり、厳密には1.5mよりは長くなりますが、必要な誤差と考えてください
なお、整経の長さが1.5m未満の場合でも、左側手前の鉄棒が折り返し点になることは変わりませんが、右側の固定の鉄棒は使わずに整経することになります そうした時も調整棒の取り付け方が目安になります

輪整経の整経作業

大管立てには、上段下段とも先端の丸い直径約5mmの釘が、上部は長めに下部は短めに固定されています 大管を立てる時は、大管の芯の穴に上部の長い釘を挿してから、下部の短い釘に置きます 立てた大管の糸口は、同じ方向に出します

大管に糸が多めに巻かれる時は、隣の大管との接触を避けるため、釘の間隔をひとつ置きにすることがあります また、大管の本数が少ない場合もそのようにします そのようにして、この後の「あぜ取り」の作業をやりやすくします

上段のみ、下段のみ、横一列に大管を並べて使用することもありますし、上段下段に縦1列に立てて並べることもあります この使い分けは、経糸の配列や意匠により決めます

前述の計画で巻いた10本の大管を、上段下段1列、釘を1つおきにして計5列立てます 必ず糸口が同じ方向から出ているように確認します 糸口の方向が違う大管があると、あぜ取りの混乱に繋がります

10本の大管の糸先を合わせて結び、輪になった結び目を整経台の始点に決めた鉄棒にかけます

始点から10本の糸を束ねて、整経台上の決めた糸道に引いていきます 大管から引き出される糸がたるまないように片方の手で抑えつつ、もう片方の手で折り返す鉄棒にかけていきます 経糸をかける鉄棒が左にある時は、糸を抑える手は右手、鉄棒にかける手は左手です また、右の鉄棒にかける時は、抑える手は左手、かける手は右手になります こうして、体全体で糸を引いていきます


整経台

こうして整経台の手前右の鉄棒まで引いていきます ここから、手前左の折り返し点の鉄棒に進みますが、この折り返し点の鉄棒の30〜40cm右に10cm間隔で2本の調整棒が取り付けられています
この2本の調整棒は「あぜ取り」のための鉄棒です
あぜ取りとは、経糸をXに交差させて糸の順番を決定する作業です 「あぜ」があることで、経糸の縞や柄ゆき、本数の確認することができます さらに、あぜはこの後の作業の中でも大切な役割を担っていきます


整経台

あぜ取りのやり方です
2本の鉄棒の30cm程手前で整経の糸を止めます 大管から引き出されている糸が同じ張りで均一に並ぶように、左手で糸束を腰の前で抑えます さらに、整経台に引き揃えてきた経糸の束も、たるませないように張ります


整経台

上段下段5列並んでいる大管のうち、1番右の上段下段の糸2本を、右手の親指と4本の指で上から挟む形で入れます 経糸の束を抑えている左手にやや近い位置で糸を取るとやりやすいです この時、右手は手の甲が上に向いています


整経台
整経台

2本の糸を挟んだまま、右手を返して手のひらを上に向けます この時に、上に向いた手のひらには2本の糸があり、裏の手の甲には2本ごとX状に交差しています 交差することで2本の糸は輪になります


整経台

1番右の上下段の糸を手に入れて手のひらを返した時、手のひらには2本の糸があり、手の甲には交差した糸が4本になります 
次に、右から2番目の上下段の糸を手のひらに入れて同じように返します 手のひらの糸は4本になり、裏の手の甲には2本ずつの交差が2つでき、8本の糸が輪になります 
同じ動作を5列目の大管まで続けます こうして輪にすることで2本の糸を倍に増やしていきます このあぜ取りで糸が輪になることから、輪整経の名前があります この交差=あぜになります


整経台

5列10本の大管の糸を交差させて、2本ごとのあぜは5つでき、輪になった糸は20本になります(大管10本×2倍=20本)


整経台

大管の糸をすくい終わったら、経糸をたるませず張ったまま、あぜを持つ右手を下向きにします


整経台

経糸の束を抑えていた左手を離し、右手の中の糸の輪をゆっくりと広げます この時あぜを落とさないように、右親指と人差し指をあぜのXの間に入れます


整経台

左手で広げた輪を整経台の左端の折り返し点の鉄棒にかけ、経糸を調節しながら右手の親指と人差し指で確保したあぜを2本の鉄棒に入れます 2本の鉄棒の間に、必ずあぜのXの中心が入るようにします


整経台

あぜを2本の鉄棒の間に入れた後、あぜ付近の経糸の弛みを直します 弛んでいる糸を大管の方へ丁寧に伸ばすと、あぜの弛みは直ります この時、糸の弛みに気持ちがいってあぜが2本の鉄棒から外れることがありますから注意します

あぜを取った後、同じ糸道を通って始点の鉄棒に戻ります ここで、整経1回目と数えます

始点に戻ったらここで折り返し、同じ糸道を通って2回目の整経にかかります 今回の整経では、10本の大管で15回(15往復)と8本の大管で1回(1往復)の整経が必要です この往復のたびにあぜ取りを行います

計算通り回数と長さの整経を終えて 、最初にあぜを保全します 2本の鉄棒に交差しているあぜの隙間に梱包用の紐をくぐらせます ゆとりを持って結び目はしっかりと結びます


整経台

あぜ取りに失敗してあぜが外れていることもありますが、無理に直さずに2本の鉄棒にかかっている通りに結びます
次に、始点の鉄棒の数cm脇の経糸の束を、まとめてきつめに紐で結わえます ここはしばらくの間解きませんから、抜けないようにしっかりと結びます さらに折り返し点の鉄棒も同じように束ごと結わえますが、こちらは後の工程ですぐに解きますから、糸が乱れない程度の配慮で充分です

始点、折り返し点とも、輪の状態のまま経糸の束を腕でくさりあみにして整経台から外します

普通の整経について

もうひとつの整経を「普通の整経」と呼ぶ理由は、一般に普通の整経の方が広く使われているため、最初に織物を触れる時にこちらを習うことが多いからです いろいろな形状の整経台がありますが、普通の整経は様々な整経台に適応します

前述のように、整経の方法は縞の配列、技法により決定します 輪整経でできる意匠は普通の整経でもできますから、どちらを選んでも差し支えはありません
輪整経でも経糸1本交互の縞はできますが、偶数の本数の反復になります 偶数の反復のない奇数本数の縞のように、微妙で繊細な縞模様は普通の整経の方が好都合です

普通の整経は整経台をぐるぐると回りながら整経します 輪整経のように折り返し点がなく、始点=終点になります 整経計算は、1回の整経で大管の本数 = 経糸の本数になります

工程の上で、普通の整経が輪整経と1番異なるところは、整経終了後に始点辺りの経糸を切って整経台から外すことです 鋏を入れる場所の左右2カ所を固く結わえて固定します 整経工程の後の粗筬、千巻の工程で切った経糸の端を揃えながら進めます 千巻工程で、輪整経では千巻箱のロット棒にくぐらせ括り付けるのに対し、普通の整経では直接結ぶ作業になります

普通の整経の計算方法

例として、ウール紡毛糸のブランケットの整経を普通の整経で整えます 多色遣いですが、無地柄で経縞や緯縞に見せないように経糸を並べます

織の計画です

15羽/丸羽(鯨寸間)
21.2寸 = 約80cm
ブランケットの長さ
3m
織縮み
10% = 0.3m
整経長
3m + 0.3m(10%) + 0.5m(捨て分) = 3.8m … 4m
経糸全本数
15羽 × 2(丸羽) = 30本
30本 × 21.2寸 = 636本
大管本数
16本

整経

使用する色は7色 大管は16本です 同じ色が隣に重ならないように大管を立てます

普通の整経の大管本数は、あぜの交差を規則的にするために大管立ての上段下段を使用、上段のみ下段のみの使用、どちらの並べ方でも大管の配列を偶数列にします 
今回大管本数は16本使用しますが、配列としては8列で偶数にしています

整経回数の計算です

普通の整経は大管の本数が1回の整経経糸本数になるので、経糸全本数 ÷ 大管本数 = 整経回数 となります

経糸全本数が636本、大管本数が16本なので、
636本 ÷ 16本 = 39.75回
割り切れない数字になりましたが、まず39回の整経回数は決まりました
16本の大管で39回整経すると、
16本 × 39回 = 624本 
不足分は、
636本 - 624本 = 12本

12本の経糸を追加で整経しますから、使用する大管も12本という計算方法になります

普通の整経の整経台の使い方

整経

整経台の左側に固定された鉄棒が縦に2列並んでいます 外側の鉄棒は間隔の空いた4本、内側に等間隔の8本があります 外側の鉄棒4本は、主に普通の整経に用います

普通の整経の始点は、この外側4本のうちの1番手前の鉄棒です ここから、まず外側の鉄棒を奥、縦に進みます
この外側の鉄棒の手前から奥端までの長さは、約50cmです 経糸の整経台上の糸道は計算で求めた必要な長さに沿いますが、必ずこの始点から縦に進む50cmを通ります

普通の整経は、始点=終点です 始点の鉄棒から始まり、同じ鉄棒に戻ります そのために、整経台を繰り返し回ることが整経回数になります 普通の整経は、整経台の鉄棒の位置を物差しや巻き尺を使ってゆとりを持った糸道を探します その時も、調整用の鉄棒で長さを整えます

普通の整経の整経作業

大管から出る糸口は、必ず同じ方向から出すようにします


整経

16本の大管の糸先を結んで、左端の始点の鉄棒にかけます 16本の糸束を縦に50cm進みます 50cmの中央に約6cm間隔の2本の鉄棒があります この2本の鉄棒を「大あぜ」といい、ここで整経回数を確認します
2本の手前の鉄棒の外側から、もう1方の鉄棒の内側に経糸を束ごと通します 1回目の整経の始まりになります あらかじめ決めた糸道に経糸を進めます

整経の長さは4mですから、整経台の糸道は整経台の枠に沿って回ります 四隅の角の鉄棒にかけながら進みます 
始点の手前30cm〜40cmに2本の鉄棒が並んでいます 輪整経でも使用するあぜ取りの鉄棒ですが、普通の整経では「本あぜ」といいます 本あぜは経糸1本1本の順番を保全する役割です

あぜ取りの方法です 
2本の鉄棒の少し右で経糸の進みを止めます 左手で経糸の束を腰の高さで糸が弛まないように抑えます 右親指と人差し指の2本を逆L字状にします

本あぜを取る時は、必ず大管立ての同じ列の上下2本を一緒に取ります(上段、下段のみの使用の場合は1本ずつ)


整経

最初に、大管立ての右端、上段下段同じ列の2本の糸を、逆L字の人差し指の外側(人差し指と曲げた中指の側)にかけます 人差し指の外側にかけた糸を、逆L字の親指の上にのせます


整経

次の列の上段下段の2本の糸を親指の内側(親指と人差し指の間)でとります この時に、最初に親指にのせた糸は外さないで進めます 2列目の親指でとった糸を人差し指の内側にのせます 
人差し指にかけた糸2本と親指にかけた糸2本は、逆L字の指の間でXに交差します さらに次の列の上段下段の糸2本を人差し指にかけて親指の上にのせ、次の列は親指で糸をとって人差し指の内側にのせて…、と指を使って糸のあぜを作っていきます


整経

親指と人差し指の間に整経1回分のあぜの交差ができます 逆L字の指を真下に向けて本あぜの2本の鉄棒に入れます 最初に、右側の鉄棒に親指にはさんだあぜの糸を差し込み、次に左側の鉄棒に人差し指のあぜを差し込むとあぜの乱れや糸の弛みが少ないです 左手で、大管からの糸を抑え続けます あぜの交差が2本の鉄棒の真ん中に入り、鉄棒に交差が移ります


整経

経糸のたるみに注意し、始点に戻ります 整経台の始点の鉄棒に経糸の束をかけ、同じように整経台を縦に進みます 再び大あぜの鉄棒にかける時、今度は1回目とは反対に手前の鉄棒の内側から外側に経糸の束を通します 1回目と2回目の大あぜでXの交差ができます この糸束のあぜの交差で、回数の確認をします


整経

人差し指と親指で交互に本あぜをとっていくので、大管の配列を偶数にする方があぜが重ならずに糸の配列が正しく並びます 人差し指ー親指で1回の整経を終わらせ、次の整経のあぜ取りでも人差し指から始められるようにすることで、経糸の順番を保全できます 例えば3本の大管の配列だと、人差し指ー親指ー人差し指で終わり、次の整経でまた人差し指で始まることになり、糸の交差ができなくなります やむを得ず大管の配列を奇数にする場合、人差し指で終わった本あぜの次の整経のあぜ取りの際に、親指からあぜをとる方法もあります
今回のように整経回数が39回と多い場合、整経回数を間違えないために5回ないし10回ときりのよい数の時に大あぜに紐を挟んでおくこともできます


整経

普通の整経終了後の様子です 整経台を回る恰好になります


整経

本あぜに梱包用の紐を経糸が動く程度の余裕を持って通し、結び目は堅く結わえます


整経

整経台左端の鉄棒を挟み、本あぜ側と大あぜ側の2ヵ所に経糸の束ごと紐できつく結びます

そして、始点の鉄棒と本あぜ側の経糸を結んだ紐の間に鋏を入れます この時、張っている経糸を切るので、反動で糸が落ちないように本あぜ側の経糸を抑えます

経糸が絡まないように大あぜ側からくさりあみにしていきます

普通の整経のこの後の作業

整経

整経台から外した後の作業です
後の工程の「千巻」では輪整経を中心に説明していますので、特にここに記します

「千巻」は、整経した経糸を千巻箱に巻く作業です 千巻工程自体に違いはありません 
千巻箱には、千巻用の布とロット棒が備わっています 輪整経は輪になった経糸を千巻箱のロット棒に「通す」のに対し、普通の整経は糸の切端をロット棒に「結び」ます

千巻の時、くさりあみにした経糸をできるだけ長く伸ばし、経糸の左右と中央の誤差を少なくします 千巻の布には2cm程の間隔で切り込みがあります 「粗筬」の段階で織幅が確定しますので、織幅に合わせた千巻のロット棒の切り込みの数を数え、切り込み数に経糸を分けて結んでおきます 
千巻箱の布にロット棒を全て通し、布をやや長く引き出し、体育座りのような恰好で千巻箱の上に乗って、箱が動かないように体重で押さえます 結び方は、切り込みの間から見えるロット棒にあらかじめ分けた糸束をかぶせて通した後、布の下で糸束を二分し、上に引っ張り上げて結びます 最初に千巻箱の中心、次に左右の端を結び、切り込みを埋めるように均等の張りにしていきます

この結び付けで、経糸の張りを均等にすることが大切です 一度で済ませずに何度も確認して張りを直します 面倒なようですが、機にかけてから直すよりもここでゆっくり作業をします
「粗筬」「千巻」の詳しい作業については、それぞれの項目をご参照ください

整経工程でのアクシデントの防ぎ方と対処方法

整経台

整経工程の善し悪しは、この後の工程全般に大きく関わります ほんの少しの気遣いで整経作業を円滑に行い、後の作業をスムーズに進めることができます

整経作業中に、整経の回数がわからなくなることがあります こうした場合に備えて5回や10回などの区切りにいい時に、あぜの部分に紐を挟んで数える方法があります

挟む紐は、経糸とは違う糸や素材の方がわかりやすいです 紐を20〜30cm程に切って、目安にする回数ごとにあぜの交差にかぶせていくと、あぜの箇所に紐が入り組んでいきます 
31回の整経で10回ごとにあぜの交差にかぶせると、10回単位であぜに紐が見え隠れしますから、3回の入り組みを30回と数えられます 5回毎に挟むなら、6回の入り組みで30回になります 30回確実に整経した後に、最後の1回の整経を行えば31回になります また、5回や10回の中で数がわからなくなっても、この目印の紐の中で本数を数え直しができます
整経1回ごとに紐を目印にすることもできます ただ、整経は緩慢に進めるよりも集中して手早く行う方が経糸の張りが均等になります 慣れてきたら、目印の回数を減らした方が良いと思います

あぜ取りの失敗例ですが、2本の鉄棒の片方にはあぜがかかっているのに、もう片方の鉄棒にかけ損なったという場合が多いです かかっている方の糸の流れであぜを直すことはできます ただ、あぜ取り直後に間違いを気づいた時は直しやすいのですが、数回のあぜを重ねた後に直そうとすると、正しいあぜも落としてしまうことがあります こうした時は、無理に触らずに次の工程で修正する方が得策です

整経途中で大管の糸がなくなってしまうということも多いです 大管の糸が途中でなくなったということに気づかない時もあります 多めに糸巻きしていることが第一の防ぎ方です
大管の糸がなくなった時は、再度糸巻きをして補充します 整経を途中で止めるので、止めた時の整経の回数をメモします 空になった大管に同じ糸を糸巻きし、整経途中でなくなった経糸の糸に機結びをして整経を再開します
同じ糸が既にない場合は、際どい方法ですが、他の大管から分けるしかありません この際は分けてもらう大管の糸を切って糸巻きをしますが、切る場所は糸がなくなった大管の糸先とは離れたところにします 織る時に、結び目が並ぶことがあるからです


整経台

鉄棒の長さは約12cmですが、整経本数が多かったり太い糸を使用する場合は鉄棒から落ちないように注意する必要があります 鉄棒に糸を押し込んでも弾力で元に戻ってしまう時は、鉄棒の折り返しの時に経糸に重ねることもやむを得ません ただ、ウールは比較的伸縮があるので多少の弛みは吸収してくれますが、綿糸や麻糸は逆に糸の弛みの原因になりますから注意深く行う必要があります

整経中に1本のみ糸の弛みがみつかることがあります
経糸をかけた直後なら、始点側に弛みを伸ばします あるいは折り返し点に近い方であれば、折り返し点の鉄棒に引き寄せておくこともできます(輪整経の場合) 数回整経をした後で弛みを見つけた場合は、無理に触らずにそのまま続けて整経を行います 弛んでいる箇所を覚えておくことが大切です

整経回数の最初と終わりの経糸の張りが違ってくることがあります 30回以上同じ張力で経糸をかけることは大変なことですが、できるだけ体全体で同じ動作を繰り返すことである程度避けられます また、大管の本数を多くして、整経回数を少なくすることもひとつの方法です 大管が増えた分あぜ取りの手間も増えますが、経糸全体の張りの緩慢は少なくなります

最後にくさりあみをする時は、必ず張った状態を保って行います 整経長が長い時は、経糸の何カ所を細い糸で結んでおくこともしますが、この時の結び目が大きいと、経糸に引っかかることがあるので注意します

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