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織物の工程「筬通し」

筬通しは、綜絖糸に通した経糸を計画で決めた「筬(おさ)」に通す工程です

筬の種類

現在作られている筬は、すべてステンレス製です 平成の始め頃までは竹製筬も作られていましたが、今では中古以外手に入らなくなりました 竹筬の軽さと暖かみは捨てがたいものですが、機能はステンレス筬でも全く変わりありません


筬(おさ)
上から
ステンレス筬15羽60cm幅
竹筬50羽60cm幅
竹筬20羽85cm幅
竹筬10羽60cm幅

糸を通す隙間のことを「筬目」といい、筬目の粗さ細かさの単位を「羽(は)」と表します 「鯨寸間筬」で、8羽から70羽まであります 10羽、15羽、20羽のように5の倍数の羽数が多いのですが、8羽、12羽、18羽、48羽の4種がその間に入り、その中から織の計画に沿った筬を選びます その他、特殊な羽数の筬もあります

尺貫法が一般に使用されなくなったこともあり、筬の単位は鯨寸間からcm間に変わりつつあります 日本の筬は鯨寸間から始まったため、これを基にcm間、インチ間の筬を制作していますが、それぞれの単位が違うことから誤差が生じます(クマクラ織機カタログ説明参照)

ここで記す筬の単位は、鯨寸間筬に統一します

筬の数字の意味は一寸間(鯨尺1尺の1/10)にある筬目の数で、10羽は1寸に筬目が10目あります 筬の数字が大きいほど筬目が細かく、小さいほど粗くなります

筬の選び方は、何を織るか、どのように織るか、どの程度の打ち込みにするか、糸の強度撚度などを考えて決めます はっきりとした決まりはありません 織る人自身の個性になります

筬の役割

筬には2つの役割があります 織物の幅を保つ、打ち込み具の2つです

筬の打ち込みは、織物の仕上がりを左右する大切な動作です 堅い織物を得たい時、柔らかい質感を求める時、その時々で打ち込み方が違います 打ち込みという言葉が不似合いなくらい静かな時もあります
また、打ち込みの強弱と共に、経糸と緯糸のバランスで糸が筬目の間で生きるもののように動くことがあります 風合い(ふうあい)という言葉がありますが、その意味を布の持つ心地よさと美しさとするなら、こうした思わぬ糸の変化も風合いのうちに含まれると考えます これらは、すべて打ち込みと糸との相性で生まれるものです

筬の羽数は最初の計画で決めますが、実際の工程の中で柔軟に変更していくこともあります

筬通しの方法

筬通しは、織る目的や糸の太さなどによって複数の通し方があります 筬目に糸を1本通すことを「片羽」、2本通すことを「丸羽」といいます 他に、筬目に3本通す三刺し(みつざし)や4本通す四刺しなどがあり、糸を入れない筬目を「空羽(あきは、からは)」といいます ひとつの通し方だけではなく、複数の通し方を1枚の布に使用することもあります 着物や服地には、丸羽を選びます 筬目に2本の糸が寄り添うので密にしっかりと織ることができます

綜絖通しの終わった状態のまま、筬通しを始めます 綜絖枠の前に筬を平らの状態で下ろくろ棒の両端に紐をかけて、経糸の通った綜絖糸の穴のやや下にして吊るします この位置だと、あぜ棒と綜絖糸と筬が見えやすくなり筬通しがはかどります


筬通し

筬の下に約10cmほど経糸を伸ばす余裕が必要です 筬通しの作業中、筬に通した経糸が抜けないように結わえておくためです 綜絖通しの後の経糸の糸端が短いようだったら、千巻箱に付いている菊(歯車)を回して経糸を引き出し、長さを調節します


筬通し

筬を購入した時、筬の中心点に▼マークをつけます ここが常に織幅の中心なります 予定の織幅を2で割り、筬の中心点と織幅の中心を合わせて、端の筬目を見つけます 綜絖通しと同じく、利き手の方から始めます

筬通しに使用する道具は、粗筬で使用した真鍮製の<筬通し>と同じです

丸羽の通し方を記します 綜絖通しで順通しをした場合、綜絖は1 - 2 - 3 - 4の順に通っています 経糸の端から綜絖1と綜絖2の糸を選り分けて、通す筬目に対して直角に置きます 筬通しの凹にへこんだ部分で、筬目に挿し入れます 次に綜絖3と綜絖4の糸を選り分け、次に通す筬目に直角に置いて、筬通しのへこんだ部分で挿し入れます 粗筬とは違い、本通しは間を空けずに筬に通していきます

抜ける筬目がないように、このまま続けていきます

順通しで丸羽の場合、1ー2と3ー4が1組になります また、綜絖通しが他の方法でも筬1目に2本の糸を通すことを丸羽といいます 綜絖通しで2本引き揃え(経糸2本を1本として綜絖糸に通すこと)で通し、筬通しでも2本を1目に通す時でも、綜絖2本引き揃えの丸羽という言い方をします

筬通しをして筬の下に出た経糸の糸端は、綜絖通しと同様に糸が抜けることを防ぐために、一握りの幅になったら必ず結わえていきます

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