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糸染の工程「綛糸の糊付」

綛糸の糊付

糊付は、糸の毛羽をふせて織り易くするため、あるいは経糸使用には強度が足りない糸を扱いやすくするための工程です

すべての糸に行う必要はありません 毛羽があっても筬目が粗い時はあえてしないこともありますし、毛羽が目立たない糸でも筬密度が細かい場合はしっかりと糊付をすることがあります
詳しくは、織っている時の支障より、「経糸の毛羽」をご参照ください

どういう織物を織るか、そのためにどんな糸を使用するかにより、しょうふ糊のみの糊付、布海苔も併用する糊付を選びます
筬密度が粗く経糸の毛羽が支障ないような時は、しょうふ糊のみの糊付をします また、綿糸や絹糸で絣技法は、糸を強く括ることから、強度を持たせるためにあらかじめ糸をしょうふ糊で糊付してから作業に入ります
綛糸の糊付は、素早く乾かすために、なるべく晴れた日中に行います

しょうふ糊の作り方

しょうふ糊は、綿糸、麻糸、絹糸に使用します

しょうふ糊の濃度は3%〜1%の範囲が多いですが、綿糸の単糸には10%以下の濃度にすることもあります ショール、マフラーなどの肌触りを大切にする織物には、素材の種類の区別なく薄い糊を作ります


しょうふ糊

ここでは2%のしょうふ糊を例に記します パーセンテージが変わっても作り方は同じです
綛糸の重さの2%のしょうふ糊を量ります


しょうふ糊

綛糸が余裕を持って入るボウルにしょうふ糊を入れ、糸の重さの2倍の水を注ぎ、弱火にかけます 薬さじで丁寧にかき回しながら糊を溶かします


しょうふ糊

75度前後になるとしょうふ糊が半透明になります 温度計がなくても目で見て確認できます この状態を糊化(こか)といい、糊化したら火を止めます 煮立てることは厳禁です


しょうふ糊

半透明の糊に糸の重さの2倍の水を注ぎます 液量は、全体で糸の重さの4倍になります


しょうふ糊

糊付する綛糸は完全に乾いた状態にしておきます
糊の液を撹拌し、乾いた糸を入れ、糸全体に糊が染み込むように揉みます 糊が行き届いたら30分置きます

綛糸が濡れた状態で糊付を行う場合は、半透明になったしょうふ糊に注ぐ水を糸の重さと同量とし、全体の液量は糸の重さの3倍になります これは綛糸が湿っている分を差し引くからです


布海苔としょうふ糊併用の作り方

練絹の玉糸や生糸のように撚りの甘い糸、毛羽が強い糸を経糸に使う時は、布海苔としょうふ糊を一緒に使用して糊を作ります

用意するものは、染色用の温度計、晒木綿を袋に縫ったものを準備します

布海苔としょうふ糊の割合は、毛羽の立ち方により加減しますが、布海苔の割合を多くし、しょうふ糊は布海苔の半分以下にすると粘り気のある糊が出来ます


糊

ここで使用する糊の濃度は、主に細い玉糸や生糸に用いるものです
布海苔  …糸の重さの5%
しょうふ糊…糸の重さの2%
糸の重さの5%の布海苔を量り、細かくちぎります ボウルに入れ、糸の重さの2倍の水に浸して、一晩置きます


糊

翌日、糸の重さの2%のしょうふ糊を量り、水に溶けた布海苔に入れます 軽く混ぜ合わせて、弱火にかけます


糊

薬さじで撹拌しながら温度を測ります 75度前後になると糊化するので、火を止めます


糊

晒木綿を縫った袋に糊化した糊液を注いで濾します 布海苔は粘り気があるので充分に絞ります 袋の中に布海苔のカスが残ります


糊

糸の重さの2倍の水を注ぎます よく混ぜます


糊

乾いた綛糸を入れて、充分に揉み込みます この時に糊が綛糸全体に行き渡らないと、後の工程で糸の切れる原因になります そのまま2〜3時間つけ込みます


糊付後の綛糸の絞り方とさばき方

しょうふ糊は30分後、布海苔としょうふ糊の併用の糊付は2〜3時間後、綛糸を絞り、糊の付いた綛糸をさばきます この作業を丁寧さで、糸巻きが楽になります

糊液に浸した綛糸を手で絞ります その後、さらに堅く絞るために、織機の男巻と竹の棒(なければステンレス棒)を使用します

ここでは、高機を利用する糊付後の処理方法を記します

機の踏み木の辺りにタオルを充分に敷き、大きめの洗面器を置きます これは糊の滴り汁で機や部屋を汚さないためです さばく際に機に振動が起きるために、筬柄を外しておきます また、杼箱に入っている小物なども除けます

男巻から男巻布とギアを外し、糊付した綛糸を男巻に通して、再び男巻を機に取り付けます

男巻に通した綛糸の手前に短めの竹の棒を通し、強く張りながら綛糸をねじり絞ります 最初右回りにねじり、綛糸に付いている余分な糊を絞り落とします
ねじりを解いて、次に綛糸の位置を半回転ずらして、今度は左回りに張りながらねじり、再び余分な糊を落とします ねじりを解いて、もう1度右回りにねじるとほとんど糊は落ちます ねじって余分な糊を落とすことで、糸の糊が均一に定着します この作業中、滴り落ちる糊の雫を洗面器に入れるようにします


しょうふ糊

糊が滴らなくなったら、綛糸のさばきに入ります
綛糸をさばくとは、糊で固まった糸を1本1本ほぐす作業です 竹の棒で綛糸を勢いをつけて強くはたきます コツは男巻にかかった場所を支点にして、竹の棒を手前に素早く勢い良く張ります よく絞られた綛糸ならば、2、3回はたくと糸がほぐれてきます 竹の棒のかかる位置を変えて、2、3回同じようにはたきます
糸がほぐれてきたら、綛のあみそを開きます あみそとは糸の重なりを守っているもので、丁寧に開くことで糸巻きが楽になります あみその数は綛により違いますが、すべてのあみそに同じように開きます あみそを分けている綿糸(あみそ糸)を竹の棒に置いて、指であみその隙間を広げていきます 丁寧に広げていくと、綛糸の重なりの交差がきれいに分かれてきます そして、次第に交差の形が大きくなります 糸の交差は、1本の糸の流れです くっきりとした交差ができると、糸が完全にほぐれた状態です 濡れた状態よりも半乾きの方がよく開きますが、完全に乾いてしまうと逆に糊で固まり開かなくなります


しょうふ糊

交差の糸の道筋が分かれてきたら、綛糸に重しを通して干します 作業後、男巻に付いた糊を拭き取ります

布海苔を併用した糊液は粘り気があり、滴り落ちにくい状態です そのため、ねじって棒状になった綛糸から手で糊を削ぎ落としたり、きれいな布で糊を吸い取ると、余分な糊を残さずに絞ることができます また、細い糸はあみそを分ける作業を丁寧に細かく行います 糸の流れが見えるまで分けることで、糸巻きの工程がより容易になります


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