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織物の工程「綜絖通し」

綜絖通し(そうこうとおし)」は、綜絖枠に並ぶ「綜絖糸(そうこうし)= ワイヤーヘルド」に経糸を通す工程です ここでは4枚綜絖で記します

高機の準備

高機

高機には様々な形があり、綜絖通しの方法も機種により違います クマクラ製織機はすべての工程を一人で行えるように改良されています

綜絖通しをするために、高機の前部の部品を外します 外す前の状態です


高機

腰掛け板と丸太状の「男巻(おまき)」を外します 男巻の右側にギアと把っ手がついています ギアを調節する上ストッパーのバネを、男巻付近にあるバネを留めている釘から外します 機本体に凹形の丸い穴があり、男巻の両端には凸形の突起があります 右のギア側を左の方へ軽く押すと、重い男巻も容易に外せます

「筬柄(おさづか)」を機上部の溝から、吊り棒ごと外します 吊り棒と筬柄は別々に下ろしても構いませんが、作業の終了後にまた同じ位置にかけるので、一緒に外した方が便利です ここでは小物を入れる「杼箱」にかけています
こうして綜絖の前の部品を外して、綜絖枠の前に椅子を置きます 「踏み木」に椅子の足がかからないようにします

綜絖通し工程の高機の使い方

高機

ろくろ式高機の「ろくろ」とは、綜絖枠を吊るしている「ろくろ棒」のことをいいます 高機の上部に直径約4cmの「上ろくろ棒」が1本かかり、この上ろくろ棒の左右にイタリアンコードが3重に巻かれています 左右のイタリアンコードの先端4ヶ所には、「お札」と呼ばれるアクリル製の板が結わえ付けられています お札には丸穴が空いていて、「下ろくろ棒」の突端部分がはめられるようになっています 下ろくろ棒の左右4〜7cmのところに深さ5mm程の溝があり、ここに下ろくろ棒の直径を通す穴が空いていて、この穴にイタリアンコードが通り、溝の間に左右対称5〜6重巻いてあります この下ろくろ棒のイタリアンコードに吊るされているのが綜絖枠です 4枚綜絖の場合、下ろくろ棒は2本あります 手前から1番と2番の綜絖枠は前の下ろくろ棒に、3番と4番の綜絖枠は後ろのろくろ棒に吊るされています


高機

この項では綜絖枠(そうこうわく)の枚数は4枚ですが、織物は2枚の綜絖から織ることができます 経糸本数が多い場合、2枚綜絖だと経糸が擦れたり綜絖枠が重くなるために、同じ経糸本数を1/4に分散するという意味で4枚綜絖にすることが多いようです また2枚綜絖は平織のみの「組織」になりますが、4枚綜絖だと組織の幅が広くなります
*「組織」については、別項「染織基礎知識・組織」をご参照ください

ろくろ式高機の場合、綜絖枠の枚数は偶数になります 組織により6枚綜絖、8枚綜絖にする時はろくろ棒を増やして対応します

綜絖は「踏み木」と連結しています この連結を「タイアップ」といいます 経糸の綜絖の通し方と、踏み木と綜絖枠の繋げ方で様々な組織を織ることができます 多くの場合、綜絖枠と踏み木を繋げているイタリアンコードの位置は動かさずに使用します 織る人によって多用する組織が違うので、それぞれ使いやすいタイアップを選びます 綜絖枠と踏み木を繋ぐイタリアンコードの結び方は、いかり結びといいます これは綜絖枠とろくろ棒の結び方にも利用しています いかり結びは、踏み木や綜絖枠が不均等になってもすべてほどかずに調整できる結び方です

写真のタイアップは、ひとつの例です ここでは平織を多用するために中央2本の踏み木で平織を織るように設定しています その他、この6本の踏み木で多様な織り方ができます ちなみに、この機は6本踏み木8枚綜絖まで可能です

綜絖糸(ワイヤーヘルド)の調整

高機

現在市販されている綜絖糸は、ワイヤーヘルドが多くなっています 綜絖糸の言葉の由来は、ワイヤーヘルド以前に糸製の綜絖を使用していたからです 今でも糸綜絖を使用する機はあります

綜絖糸(ワイヤーヘルド)は、糸の太さにより使い分けます 細い糸で細かい筬の場合は、細い綜絖糸を用いますが、通常はウール糸や綿糸に適した27番ワイヤーヘルドを使用しています

購入直後の1束500本(27番ワイヤーヘルドの場合)の綜絖糸は、上と下の穴に1本の細く丈夫な紐が輪になって通っています この細紐に沿って整列して通っているので絡むことはありません この順番通りに綜絖枠の上下の綜絖ロット棒に入れていきます 綜絖糸は上下対称なので、区別がつくように上の穴の上部に赤または黄色の目印があります

綜絖糸の本数は、経糸本数によって調節します 
経糸本数分を綜絖通しの前に用意します 綜絖糸が経糸本数より足りない時の不足分の追加は、綜絖通しの作業中に行うと綜絖糸の束を落とすなどの失敗のもとになります また、経糸本数よりも綜絖糸本数が多い場合は、抜かずに多い分の綜絖糸を2分し、左右に除けておきます ただ、織幅が綜絖枠ぎりぎりになると、余った綜絖糸が端の糸に接触して糸が切れることがあります また、1枚の綜絖枠に100本以上残っているような時は、綜絖枠自体が重くなって踏み木の踏みが重くなったり、開口が悪くなることがあります こうした時は、余った綜絖糸は抜きます


高機

経糸本数と綜絖糸の本数を調整します 「輪整経の計算方法」で整経した経糸を引き続き例に取ります

経糸総本数 = 316本
今回、4枚綜絖で「順通し」をします 綜絖は1番手前の綜絖から1 - 2 - 3 - 4と数えます 順通しとはこの順番通りに1 - 2 - 3 - 4 、または、4 - 3 - 2 - 1と糸を通していく方法です そのため、1枚の綜絖の必要綜絖糸の本数は4枚共同じになります 
1枚の綜絖枠に必要な綜絖糸
316 ÷ 4 = 79本 
織物倶楽部の織機は、1枚の綜絖枠に通常100本の綜絖糸を入れておきます その上で不足分を補充しますが、今回は充分足りてます 100本のうち使用しない綜絖糸が21本ありますが、約30cmの織幅なので抜かずにそのままにしておきます

上記の計算で、綜絖糸の補充が必要になった時の方法です

まず、足りない綜絖糸の数を、あらかじめ綜絖糸の束の中で数えておきます

1枚の綜絖枠には、上下2本の綜絖ロット棒があります 綜絖ロット棒の左右両端に直径3mmの穴が空いています これは綜絖枠の側面に付いている鉤をはめる穴で、この鉤で綜絖枠と綜絖ロット棒を固定します

1. 上の綜絖ロット棒についている左右両方の綜絖ロット棒の鉤を外します 鉤を外すだけでロット棒は抜かないようにします この時に、既に入っている綜絖糸を落とさないようにロット棒の中央に集めておくと作業がやりやすいです 

2. 綜絖糸の束を、色がついている方を上にして持ちます 上部の綜絖ロット棒が動くようになりますから、片方のみ綜絖枠の穴から外します 綜絖ロット棒の端の穴に、綜絖糸を束ねている細紐の一方の先端を通し、細紐をつけたまま綜絖枠の穴に入れます 

3. 下綜絖ロット棒の左右両方の鉤を外し、先程外した上綜絖ロット棒と同じ側を綜絖枠から外します 上と同じく細紐の先端を綜絖ロット棒の穴に通し、綜絖枠の穴に入れます 

4. 上下綜絖ロット棒の穴に通した細紐の長さに余裕を持たせながら、上綜絖ロット棒を綜絖枠の穴から外し、あらかじめ数えた本数分の綜絖糸を順番通りに入れていきます この時、必ず細紐に通したままにします 

5. 補充分を通したら、紐をつけたまま綜絖ロット棒を綜絖枠の穴にはめます 次に下綜絖ロット棒を綜絖枠の穴から外して、上綜絖ロット棒に通した補充分の綜絖糸を入れます こうして、綜絖糸は上と下と同じ順序で入ります この間、細紐はつけたままです  綜絖糸の束を持ちながらの作業なので、落としてバラバラにしないようにします

6. 綜絖ロット棒に補充分の綜絖糸を入れたら、綜絖ロット棒の穴に通した綜絖糸の束の細紐を抜き、綜絖枠に綜絖ロット棒をはめて鉤をつけます  作業をする穴は片方だけですが、綜絖ロット棒の片方の鉤だけを外して綜絖糸を入れると、綜絖ロット棒を動かした時に鉤に余分な力が加わり壊れることがあります 必ず、左右の鉤を外して綜絖糸の補充をしてください

1〜6は、織機の上で綜絖糸を入れる方法ですが、綜絖通しの前に補充するのならば、4枚綜絖上下2本ずつ計8本の綜絖ロット棒を全て綜絖枠から外して床に置いて入れる方が安定してできます この場合は、あらかじめ入っている綜絖糸を落とさないように、ゴムなどで綜絖ロット棒の端を押さえて行ってください

綜絖糸は順序よく輪に入っていますが、ワイヤー同士がもつれたり絡んだりすることがあります 指で弾くように扱うともつれが解けます また、綜絖糸の出し入れを繰り返し、並んで通っているはずのワイヤーヘルドが交差してしまい、そのまま綜絖ロット棒にXに入り組んでしまうことがあります 2本程度の織りに差し障りがない本数の交差ならば、この2本をそのまま放置して綜絖通しをしますが、入り組んでいる本数が多かったり経糸が混んでいるなど支障がある時は、交差してしまったワイヤーヘルドを切断する方が賢明です

綜絖通しの方法

高機

千巻工程で千巻箱に巻いた経糸は、機草を挟んで円柱状になっています

千巻箱の四角い空洞に専用の芯棒を入れます 「菊」という歯車を左側にはめ、高機の後方部の上にある丸いくぼみに収めます このくぼみは、綜絖通し工程を一人で行うことができるように、クマクラ織機で工夫されたものです
機の後ろから見て左側のくぼみの内側に小さな釘があり、ここで歯車の菊を止めて千巻箱を固定します

千巻箱を、あぜ棒ごと経糸の流れが外回りになるようにして、綜絖枠の後ろまで垂らします


高機

綜絖通し工程は経糸本数にもよりますが、織物の工程の中では1番地道な作業です さらに同じ姿勢で続けることから疲れも感じやすくなります 経糸1本綜絖糸の入れ間違いだけで織り方が乱れてしまうので、気が抜けない作業でもあります

2本のあぜ棒を綜絖糸の中央の穴よりもやや高めに据えると、綜絖糸と経糸のあぜの交差が見やすくなります 上ろくろ棒に長さが同じ紐を左右に吊って、千巻箱から下りているあぜ棒の上の棒の両端に括り付けて安定させます あぜ棒の位置の調整は、綜絖通しの疲労や間違いを防ぎます

2本のあぜ棒には、整経した通り経糸が交差しています その順番に従って綜絖糸の穴に通していきます

綜絖枠の後ろに吊った2本のあぜ棒は、真正面から見て10cm程の間隔で横に平行に並んでいます 4本1組のあぜの場合、2本の経糸は上のあぜ棒の後ろを通って下のあぜ棒の前を通っています 次の2本は上のあぜ棒の前を通ってから下のあぜ棒の後ろを通ります この下のあぜ棒の後ろを通っている糸は、必ず下のあぜ棒に通した形でを綜絖糸に通します 無地の時は、同じあぜ棒を通る2本の糸のどちらを先に通しても構いません ただし、色の配色などの意匠がある時は、それに沿います


高機

綜絖通しで経糸を通す道具は、工程と同じ名前で「綜絖通し」といいます 先端が鉤状になっていて、ここに経糸を引っ掛けて綜絖糸に通します この綜絖通しは、糸種や綜絖糸の種類に合わせて普通のタイプと絹用の細いタイプの2種類があります


高機

綜絖通しは、右利きの人は右の、左利きの人は左の、端の経糸から始めます

まず1枚の綜絖枠の綜絖糸を10本ずつ数えます 4枚綜絖ですから、計40本の綜絖糸を全体から離します 前述のように綜絖枠は手前から1ー2ー3ー4、と呼びます 今回順通しを計画していますから、この順序の通り糸を1本ずつ通していきます

綜絖枠を正面から見ると、4枚の綜絖の綜絖糸が重なり合ってどれが何番の綜絖か混乱します このような時は、綜絖糸ではなく綜絖糸の通っている下綜絖ロット棒を見ると綜絖の順番がわかりやすいです


高機

ここでは右利きの方法で記します 左利きの場合は逆に行います

40本の数え分けた綜絖糸から、綜絖1の綜絖糸1本を数cm右に離します あぜ棒に交差する経糸の、最初の交差の2本のうち1本の糸を選り分けます 右手に持った綜絖通しの鉤を綜絖1の綜絖糸の穴に1cm程度入れます 選り分けた糸を指で綜絖糸に引き寄せて、鉤に引っ掛けます そのまま糸を手前に引きます

次に、綜絖2の綜絖糸を1本、やはり数cm離します 綜絖1に入れた糸と同じあぜの糸を左の指で綜絖糸に引き寄せます 綜絖通しを綜絖2の綜絖糸の穴に入れ、引き寄せた糸を引っ掛けて通します

同じように綜絖3の綜絖糸を選びます あぜの糸は綜絖1、2とは逆の交差になり、やはり2本が同じ方向にあぜ棒にかかっています 1本を左の指で選り分け、同じように綜絖3の穴に通します

1番奥の綜絖4の綜絖糸を選び、綜絖3に通したあぜと同じ糸を通します
あぜ棒に交差している糸の本数は、整経の方法で異なります 最初の糸は上のあぜ棒の前を通ってから下のあぜ棒の後ろを通り、次の糸は上のあぜ棒の後ろを通って下のあぜ棒の前を通るという基本は変わりません

正しくあぜ棒に交差していても、経糸が弛んでいると糸が絡んで通し間違いになります 糸を選り分ける時、経糸を張るとあぜが分けやすくなります 綜絖通しの順序は、必ずあぜ棒に通っている順序に沿います
綜絖糸に糸を通す時、指であぜ棒に交差している糸を手繰ると手首や腕回りの衣服が糸や綜絖糸に触れて乱れることがあります できるだけ動作は小さく、素早く綜絖通しを動かすことがコツです

作業前に40本の綜絖糸を数えました 1ー2ー3ー4の綜絖に正しく通っていれば、40本の綜絖糸が余ることはありません 40本の経糸の綜絖通しができたら、経糸の糸端を40本ずつ結わえておきます もし、4枚の綜絖の中で綜絖糸が余ったり足りなかったりしたら、通し間違いかもしれません 例として、40本の綜絖通しが終わりに近づいて、綜絖1の綜絖糸が2本、綜絖2の綜絖糸が1本、綜絖3が3本、綜絖4が2本という具合にです 単純に最初の綜絖糸の数え間違いということもありますが、念のために40本の通し方を点検します よくある間違いとして、1ー2ー3ー4と通すところを1ー2ー2ー4と通してしまったりすることがあります こんな時は間違った通し方をしたところまで綜絖糸から糸を抜いて、正しい通し方にやり直します 40本の綜絖糸をあらかじめ分けることで、40本の中で入れ間違いを直します すべての綜絖糸に通した後で間違いを直すよりも早く修復できます

経糸をすべて通した後に綜絖の通し間違いに気づいたような場合は、織っている時の支障「綜絖の通し間違い」」を参考にしてください

綜絖糸に通した糸が周辺の綜絖糸の間にくぐったり、通した順序で手前に糸口が出ていなかったりすることがあります 通した綜絖糸は必ず右側に寄せておきます また、綜絖糸の穴の下2cm辺りを目安に綜絖枠の端から端に細い紐を繋いで、この紐の上に通した糸をのせておくと、通した糸が横の渡した紐に上に載って逆戻りしません この紐は、綜絖通しが終わった段階で外します

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