HARU

HARU 晴織物倶楽部


TOP | 教室 | 倶楽部について

織っている時の支障」1

綜絖の通し間違い

綜絖通しの最中に通し間違いに気づいた時、これは直しやすい例です 順通しの場合ですが、あらかじめ1枚の綜絖枠に10本ずつ、4枚で40本の綜絖糸を全体から選り分けます この40本の中でどの綜絖を抜かしたか、順通しの食い違いがあったかを確かめ、そこですぐに通し直すことができます

織り始めや試し織を始めた時に、通し間違いを見つけることもあります 早めに気づけば、織面の傷も浅くすみます
そのために、試し織りの前に通し間違いがないかを必ず確かめます 踏木を踏んで経糸を開口させ、組織通りに同じパターンで経糸が上下しているか、踏み木を踏んで真横から開口の様子を見て絡んでいる経糸がないか この2点を確認します

綜絖の通し間違いの多くは、綜絖糸の入れ違いです 例えば、順通しの通し方で、綜絖1ー2ー3ー4と通すところを、1ー1ー3ー4と通したとします これは、綜絖2に通すはずの経糸を綜絖1に通してしまったので、それを直す必要があります

織る前に通し間違いに気づいたら、その箇所の経糸を男巻のロット棒の結び目を解き、通し間違っていた糸をワイヤーヘルドから抜きます 
また、織り始めてから気づいた時は、通し間違いの糸を織前の3cm程先で切ります 切った糸を通っていた筬と入れ違っていた綜絖糸から抜き、綜絖枠と間先の間にわかるように置いておきます


機結び

極細の漁網糸や化繊糸など丈夫で細い糸を、ワイヤーヘルドの2.5倍ほどの長さに切ります 通し間違えた糸が本来通るはずの綜絖の場所を空けます 左右に経糸が混んでいますから、2、3cm空ける程度で充分です 用意した細い糸を二つ折りにして折った山の部分を、空けた隙間から綜絖枠の上ロット棒に輪かけにします


機結び

上ロット棒に輪かけした糸に、ワイヤーヘルドの中央の穴と同じ位置、同じ大きさの穴を作ります 小さくひとつ結び、1cmほど間を取ってもうひとつ結ぶと2つの結び目の間に穴ができます 穴の位置がワイヤーヘルドとほぼ同じになっていることを確かめ、下ロット棒に多少動く程度の余裕を持たせて糸端を結びます 開口の邪魔にならないように、下ロット棒に結わえた漁網糸の糸端は短く切っておきます この仮の綜絖糸に先程抜いた糸を通し、筬にも通します 男巻のロット棒を解いた場合は、通し直した糸を一緒に結び直します 織前の先で切った場合は、経糸の糸端に同じ糸を機結びして長くし、織面に待ち針で留めます

もうひとつありがちな間違いは、綜絖は計画通りに通っていますが、経糸が順序通りまっすぐに並んでいない場合です 順通しの1ー2ー3ー4の例えで、2番綜絖の経糸が1番綜絖の経糸の前にくぐっていたり、3番綜絖に通した糸を2番綜絖にも通してしまったりすることです このような状態は、経糸は開口できません 織る前に踏木を踏んで、上下に開口している経糸の中に身動きできない糸を見つけたら、その間違いのことが多いです この時は、綜絖が正しく通っていることを確かめ、絡んだ糸を筬から抜いてまっすぐな経糸の流れに直してから、改めて筬に通します

筬の通し間違い

筬の通し間違いの多くは、筬目を抜かすか、余分に経糸を通すことです 通っていない目があると緯糸を入れた時に縦にはっきりとした溝ができ、余分に通すと盛り上がった筋ができます

筬の目抜かしも余分に通した時も、通し直します 例えば間違いが右寄りにあったなら、その筬目より右側の経糸を男巻ロット棒から解きます その時に一度にまとめて解かずに、間違いの筬目に近い方から結び目のみひとつずつ解いていき、筬から経糸は抜かないでおきます 筬目を抜かした時は、綜絖の順序を確かめながら真鍮製の筬通しの鉤の方を挿し入れ、隣の目に通っている糸を鉤に引っ掛けて移し替えていきます。この時、必ず解いた経糸の束を引っ張りながら作業を続けます また、余分に通した場合は筬から余分の経糸を抜き、やはり綜絖の順序を確かめながら、隣の筬目の糸も抜いて、入れ替えるように通していきます 双方とも、必ず解いた経糸の束を引っ張りながら作業を続けます この直し方は、筬を筬柄にはめたまま行います 姿勢はややつらくなりますが、直さないことには織ることができないので仕方ありません

筬目に余分に通した時の処置のひとつに、意匠や組織、幅に問題がなければ、余分に通した糸を抜くこともあります 抜いた糸は織り上がるまで千巻の周辺に置いておきます

その他よくある通し間違いに、綜絖の順序は正しく、筬に通す時に糸をクロスさせてあぜの順序通りにならなかった場合があります

1ー2ー3ー4の順通しで丸羽の例で、筬通しでは1ー2と3ー4の2本ずつが1目になります それを2と3を交差させ、1ー3と2ー4という筬通しをした状態のことをいいます 経糸がまっすぐに通っていないために、この部分だけ開口しません 直し方は筬目の数は合っているので交差している糸のみ筬から抜いて直します

経糸が切れた時

どんな糸でも切れるものです

糸の切れる原因は、織っているうちに糸が弱くなり擦り切れる、毛羽がひっかかり絡んで切れるなど様々です 切れたことにすぐに気づけばいいのですが、数cm織ってから見つけることもあるので、その時々で直し方も変わります

経糸が切れた直後に気づいた時は、織前に糸端があります その糸筋を筬に向かってたどり、さらに綜絖をたどると、空になった綜絖糸が見つかります もう片方の糸端は、その空綜絖の周辺で見つかることが多いです

修復のやり方です 切れた経糸と同じ糸を、綜絖側の糸端に機結びをします 結んだ糸は男巻に届く長さに切ります 結んだ経糸を空いた綜絖糸に通し、この綜絖糸が何番目の綜絖か確認し、丸羽の場合は相棒の糸と同じ筬目に通し、片羽の場合は抜けている目に通します 切れた経糸の結び直しは、必ず経糸と同じ糸で機結びをします 別種の糸で機結びをしても結ぶことはできません


機結び

この時の注意は、経糸の流れをまっすぐにすることです 織前のもう一方の切れた糸端と合わせ、2本の糸を一緒に待ち針に絡ませて織面に刺します そのまま織りを再開します 待ち針は男巻に巻き込まずに、男巻の丸みにさしかかったあたりで抜きます

切れた糸端の始末は、織布の密度により使い分けます 打ち込んで密度の混んでいる織物は、糸端を織面の際(きわ)で切ります 打ち込みが軽く織面の粗い織物は、細めのステッチ針を使用します 2本の糸端うち長い方を針穴に通し、この経糸の糸筋通りに織面の表と裏に刺して、織られている経糸と同化させます 3、4cmくらい修復し、糸端はそのままにして織りを進めます この糸端は、織り上がり後に織面間際で切ります ステッチ針を使用するのは糸を通す穴が大きいため、多様な織糸に対応できるからです 針の細さや長さもいろいろあり、織面や糸なりに合わせて選べます

経糸が切れたことに気づかず織り進んでしまった場合です 切れた糸が他の経糸に絡んで、開口が悪くなってようやく見つけることがあります

このような場合、まず機の後ろに回って切れて絡んだ糸の流れを千巻からまっすぐに糸筋を直します 流れをたどり、空になった綜絖糸を見つけます 男巻まで届く長さの同じ糸を長めに用意し、千巻側の切れた糸と機結びをします 綜絖糸に結び直した糸を通し、さらに筬も通します

この時、織前側の糸端が見つからないことがありますが、結び直した糸のみを織前に待ち針に留めて織りを再開します 5cmほど織ったところで待ち針に留めた糸で織面の修復をします 修復は織り進んでいる方向と逆に行います 経糸が抜けた状態で数cm織ったので、その経糸が通るはずだった線が抜けています ステッチ針に待ち針で留めておいた糸端を通し、織られている両隣の経糸の浮き沈みと緯糸の抑え方を見ながら、そこにあるはずだった経糸を縫うように入れていきます 平織なら緯糸1本おき、綾織なら緯糸2本おきというように、組織には繰り返しがあるので、それを理解して修復をします ただ、いったん織り進んだ織物は、経糸が途中で抜けてもそこを空けておいてくれません 織面は締まった状態になっているので、針の刺しどころに注意します 抜けていた経糸を修復し、正常に織られているところまでたどり着いたら、3、4段織った経糸と同じところを刺して糸を同化させます これで修復が終わり、織りを再開します 糸端の処理は織り上がり後に切ります


織り

この方法は、織り上がり後でもできます ただ、機から織物を離した時点で織縮みが進むため、織り目が見えにくいきらいがあります 機にかかった状態の方が、経糸を緩めることもできるので修復が早く進みます

密度が混んでいる織物は、織り目が締まっていてステッチ針が入りません 抜けた経糸を改めて刺す方法は織面を雑にします こうした時は切れた経糸のみ繋いで、経糸が入っていない箇所は、敢えて直さずに織り進めるか、どうしても直したい場合は、経糸が切れた箇所までの緯糸を抜きます 密度の混んでいる織物は、緯糸を1段ずつ戻すことは厳禁です 繊維が絡んでいて、経糸が弱り再び切れる原因になるからです

経糸を傷ませず、緯糸を抜く方法です まず、切れた経糸を探して間先辺りに置いておきます 経糸が切れた箇所に待ち針で印をつけます 織面のうち3、4ヵ所を決め、織前の経糸を指で少しずつ広げながら、糸切鋏などの小型の鋏で経糸に沿って緯糸を切っていきます 緯糸の切り跡が縦に3ヵ所か4ヵ所の筋になり、この切り跡を経糸が切れた段まで入れます その後、切った緯糸をこま切れに抜きます 初めに織面の中央部分の緯糸を抜き、織耳の折り返しは待ち針で折り返しの糸を引くと、毛羽がたたずに無理なく抜けます 糸種によっては緯糸を抜いた時に毛羽が残ることがありますが、何度か踏み木を踏み替えて開口を繰り返すと経糸も落ち着いてきます 緯糸を抜いたら、切れた経糸に新しい糸を機結びをします 結び直した糸を男巻辺りまでに切り、空の綜絖糸と筬に通します 緯糸を抜いて織前が後退しましたが、そこにもうひとつの糸端があれば2本を合わせて待ち針で織面に留めます 織りを再開して、男巻に巻かれる前に待ち針を抜き、小さく結んで糸端を鋏で切ります この方法は、間違って他の経糸を切ってしまうおそれがあります できるだけ慎重に進めます

経糸が切れる原因を考えることも必要です 同じ場所で切れる、同じ糸が切れる、機結びをしてもすぐに切れる、など、同一の原因だと思われることもあります

同じ場所で糸が切れる場合は、糸が原因ではなく機にそれがあることがあります 踏み木の角度が高く、綜絖枠に開口した経糸が接触して切れるためです この時は踏み木の調節をします(織物の工程「織り終い」機のメンテナンス 参照)

同じ糸が切れる場合は、機結びをして織前に待ち針を留めた時の張りが強すぎることがあります また、この糸のみ消耗が激しく、撚りが弱った状態だということも考えられます 前者であれば糸の張り方に注意すること、後者であればこの糸を自ら切って千巻箱のあたりまで糸の状態を確かめ、長く糸を変える方法があります また、糸は劣化することがあるので、使用前に糸の状態を点検することも必要です

機結びをしてもすぐに切れる場合は、結ぶ糸が違うことが大半です 糸は、ほんの少しの細さ太さでも受け付けないことがあります 必ず同じ糸で機結びをします


目次へ


HARU Top | Contact

Copyright(C) 2009-2023 HARU All rights reserved.