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HARU 晴織物倶楽部


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和紙糸で文字を織る

いろいろな糸を揃える

織物倶楽部を始めて、かれこれ10年になります。
当初は、咲きおりという卓上機のみを使っていました。細い糸は経糸に不向きで、主に太めのウールや滑りにくいシルクを中心にざっくりとした素朴なマフラーなどを織って楽しんで頂いていました。

染織を続けていく間に人とのつながりの中で、徐々に高機が揃い、道具類も少しずつ買い足し、次第に織物倶楽部も高機中心の楽しみ方になっていっています。
織機や道具も大切ですが、やはり一番は「糸」です。
素材は、綿、麻、絹、ウールなどの天然繊維が主です。この四種の中でもさまざまあって、綿麻混紡、ウールでもアルパカ入り、ラムウール、形も、 太、細、極細、ループ状、モヘヤなどなど。
生成糸だけでなく、色糸もあります。優しい色、強い色、段染めの色、真っ黒い黒糸、グレーがかった黒糸。書き出したらきりがありません。数軒の糸屋さんを決めて、糸見本を取り寄せ、頭をひねくりながら価格と相談して、定期的に糸を購入しています。

教室にいらっしゃる方に糸見本を見て頂いて選んでもらうこともありますが、糸見本を見て自分の織りたいものをイメージするということも難しいようです。


和紙糸

慣れてくると、ご自分で糸の棚で探して頂くこともありますが、最初は、「こういうものが織りたい」「たまには、変わった糸を使ってみたい」と、ご希望を伺って、それではこの糸でどうでしょうか?というふうなやり取りをしています。
そんなことを10年続けていると、糸が増える増える。糸と心中するかも、と内心本気で思っていますが。
それでも、あの糸をまた使いたい、とリクエストがあれば、頼んでおいて良かった、と内心思います。

織物倶楽部を始めた当初はクセのある珍しいだけの糸も購入していましたが、使い勝手が悪かったり、一度使えば飽きてしまうことを学習し、最近は糸屋さんの定番の糸や扱いやすそうな糸を選ぶようにしています。
定期的に購入している糸屋さんで、半年に1回糸見本が郵送されてくる三葉トレーディングという会社があります。定番の糸もありますが、数量限定ながら安価でいい糸が出ることがあるので、糸見本を楽しみにしています。

最新の糸見本の中に「和紙糸」という糸がありました。(2015年秋)
「和紙糸 2/11(わしいと 2の11)」
という品名で、品質に「指定外繊維(和紙)100%」、とあります。定番見本糸とあるので、今までも出ていたのかもしれませんが、気がつきませんでした。
紙布(しふ)と呼ばれる織物は、古くからあります。和紙を細く切って撚りをつけて糸にし、緯糸はむろんのこと、経糸にも使える丈夫な糸です。簡単すぎる説明ですが、その手間は大変なものだそうです。

和紙で織った布は吸収性と保温性を兼ね備えていて、木綿が貴重だった時代は広く織られ、使われていたようです。
以前、経糸が絹糸、緯糸に昔の帳簿の大福帳を撚って織り込んだ帯を拝見したことがあります。こよりに撚られた大福帳の文字が模様になり、ところどころの朱文字がポイント柄になっていて、とても素敵だったことを思い出します。
わたし自身は紙布は織ったことがないので未知の糸でしたが、たまには変わった糸も楽しいかも、というノリで1kg購入することにしました。久々の変わり糸の買い物です。

糸が届いた

和紙糸

メールフォームで注文してから、すぐに糸は届きました。
箱を開けて、他の色糸のコーン巻きの間にチーズ巻きの塊が2個。これが和紙糸です。この2個で1kgです。


和紙糸

袋から出したチーズ巻きの糸です。1本1本の糸の影がくっきり浮き出ています。

今の日常の中で、和紙をどれほど使っているのでしょう。自分の家の中だけでいえば、障子の紙。最近は和紙でない障子紙もありますが、自宅の障子紙は和紙です。随分前からある古びた和風の団扇(うちわ)に張ってある紙。ふすまの紙は確かとはいえませんが、和紙風です。自宅が日本家屋なので障子やらふすまやらありますが、こういう家も珍しくなっていると思います。お習字でもしていれば別でしょうが、きょうび和紙で手紙を書く人も珍しいでしょうし、手漉きの和紙の便箋や封筒なども売られていますが、あまり使ったことはありません。大体が、和紙を漉いている光景は映像でしか見たことはありません。世界遺産にまでなったというのに。

とにかく。
手触りの第一印象は、「堅い」。和紙というより、模造紙を撚ったような堅さです。かなり乱暴な例えですが。
こんなに堅かったけ?と思い、少し切って分解してみます。番手は2/11とありますから、双糸、1本の和紙を2本撚り合わせた糸です。2本撚り合わせの糸をほぐして1本ずつにして、本来の和紙の形状を見たいと思ったのですが。
指先で1本の糸をならすように平らにしたのですが、いや、細い。1mmほどの細さに裁断されて、それを撚ってあるようです。ずっといじっていると、次第に柔らかくなってきて、やはり紙の感触が出てきます。

少し思い直したのは、丈夫。普通のパルプ紙だと、こんなにしつこくいじったら破けます。
教室に通われている方から、別の会社から購入した和紙糸を見せてもらいましたが、そちらの糸は双糸ではなく単糸でした。1本の糸を甘撚りにしているので、この糸よりも柔らかでした。「堅い」と思ったのは、1本の糸の撚り加減が強いことと、その強い糸をさらに双糸に撚り合わせたからではないかと思います。

誰か、興味もってくれるかな?と曜日ごとにこの糸をお見せしていたのですが、
「どんな感じになるのか、晴さんが織ってくださいよ。」
と、ごく当たり前のことを指摘して頂き、今回の織物制作になったわけです。
つまりは、新しい糸の試し織りです。

何を織る?…文字を織る

試し織りなので、空いた機で僅かの整経で経糸緯糸ともこの和紙糸で織って終わり、にしようかと思っていたのですが、ここでまた「ただ織っただけじゃ、つまらないなぁ、」などと。考え始めます。
私事で恐縮ですが、文字を書くことが好きです。手紙は好んで書きます、ただ、今はメールのやり取りの方が簡単という相手が多いので、手紙を出してもメールで返事がくる、ということがほとんどです。ただし、字は読める程度の下手さです。流暢な字ではないし、お習字の経験もありません。
和紙だから文字を織ろう、と至極短絡的に思いついた今回のテーマです。
本来の目的は、あくまで「和紙糸の織り具合、布になった時の感触を知りたい」です。
なので、主役である和紙糸を経緯共に使用します。
2/11の番手はおそらくウールの番手仕様かと思いますが、今回は番手はあまり考えずに筬を決めていきます。

織の計画

cm6.5羽/片羽
30cm
長さ
70cm
整経長
70cm + 60cm(捨て分) = 130cm = 1.3m
整経方法
普通整経
糸全本数
6.5cm × 30cm = 195本 → 196本
大管
12本
整経回数
196本(糸本数) ÷ 12本(大管本数) = 16.3… → 16回整経の後、大管4本で1回追加
糸全長
196本 × 1.3m(整経長) = 254.8m
糸巻回数
254.8m → 255mとして、      
255m ÷ 12本 = 21.25m → 1本の大管に必要な長さ      
21.25m ÷1.5m = 14.16回 → 多く見積もって20回転      
(1.5mは糸車の1回転につき巻かれるおおよその糸の長さ)

教室でどの筬が必要になるともわかりません。試し織りという計画なので、今回は出番の少ないcm筬を使います。cm6.5羽は、1cmに6.5目の筬目がある筬です。
織機もこのために高機を使うことはせず、教室の時間内に皆さんの間で織るということにします。この時、空いている織機はレバー式卓上機しかありませんでした。

レバー式卓上機の使い方

和紙糸

このレバー式卓上機は、東京手織機製の大層古い型です。母校の学科閉鎖の時に譲り受けました。織機の壁面に「購入年月日 51年4月16日」とあります。51年とは昭和51年のことでしょうが、現在はこの型はありません。
4枚綜絖で、右脇の白い箱のレバーを押すと、そのレバーと連結している綜絖が上がる仕組みです。4枚綜絖ですから4本のレバーがあり、右端の青いレバーはクリアレバーです。
この織機の良いところは、レバーを操作するだけで、幾通りもの綜絖の上げ下げができることです。高機だと組織の変更で綜絖と踏木を繋ぐイタリアンコードを結び直しますが、レバー式卓上機はその手間がいらず、1枚だけの綜絖の上げ下げもできますし、3枚同時に操作することも可能です。4枚綜絖内の複雑な組織を織ることに向いている織機です。
難点は打ち込みが弱いこと、経糸の張力が緩くなりがちなこと、整経の長い経糸はセッティングが難しいことです。このようなことから、織るものを選ぶ必要はあるかと思います。
今回のように扱ったことのない糸の試し織りには向いていないのですが、この時たまたま空いていたので、この織機を使うことにしました。


和紙糸

計画通り、作業開始です。
cm6.5羽の片羽の選択は、筬の間隔に余裕を持たせて仕上げ後の和紙糸の状態を見たかったのと、多少の隙間に文字模様を織り込むためです。技法は、綴織の一種です。
まず、計画通りに経糸を大管に巻きます。扱い加減は良く、目立った支障もありません。堅い糸ですが、そのために大管に巻かれた反動で解けてしまうようなこともありません。


和紙糸

計算の分量を巻いた後、撚りが解けないように念のために和紙糸の切り端を結んでおきましたが、しっかりした撚り具合なのであまり必要なかったようです。

大管12本巻き終え、整経です。今回は「普通整経」を選びました。
レバー式卓上機は、クマクラ織機のように経糸を巻く千巻の取り外しができません。高機でもそうした織機は多く、織物倶楽部で使用している大忠木工所の高機もそのタイプです。こうした織機には輪整経よりも普通整経を選んでいます。男巻側と千巻側双方を結ぶために、整経後に経糸を同じ長さに揃えて切る必要があるからです。ちなみに、普通整経は織機の種類ではなく、経糸の縞の並び方によって選ぶ方が多いです。


和紙糸

普通整経の方法は、「織物の工程」「普通の整経について」〜「普通の整経の整経作業」をご参照ください。
今回の整経の長さは1.3mと短いです。このように、整経台の左片脇に三角形の和紙糸の束ができましたが、これで普通整経の1.3mです。


和紙糸

あぜの交差に紐の輪を付けて、経糸が直角に通っている1番左端の鉄棒に沿って経糸を切ります。切る時に鉄棒に平行にまっすぐに切らないと同じ長さにならないので、注意して鋏をいれます。
整経台から外した経糸の束です。一見、春雨みたいに見えますが、これは糸の撚りが堅いためと通常扱っている絹や綿と違う質感のせいです。


和紙糸

粗筬が終わった状態です。あぜ棒から筬にかけての糸の流れが、やはり見えにくいです。筬に通した結び目が堅さで解けかかることが何度かありましたが、筬から抜けることはありません。


和紙糸

筬のついたままの経糸を、レバー式卓上機に運びます。
まず、経糸のくさりあみを手前にして、筬を織機の筬柄にはめます。その次に、卓上機の男巻(織機の手前側)にくさりあみをした経糸を固定します。この時は、くさりあみのまま大管で男巻に結わえました。
織機にかかっているワイヤーヘルドを両脇に片寄せます。レバー式卓上機の後ろから見た写真です。


和紙糸

後ろ側から千巻のロット棒に経糸を結びます。この織機の千巻のロット棒は、本体とイタリアンコードで繋がっています。
男巻と間先の長さが短いので、結んだ時の糸の長さが織幅の中央と両側で違ってきます。短い方に合わせて結ぶとちょうど良くなります。


和紙糸

この状態だと、手前から「経糸のくさりあみを固定した男巻ーあぜ棒ー筬ー綜絖枠」の状態になっています。ここであぜ返しをして、「経糸を固定した男巻ー筬ー綜絖枠ーあぜ棒」の順番に変えます。
あぜ返しは、経糸を張った状態で行います。男巻に固定していた経糸を外して、自力で均等に張りながら、あぜ棒の紐を解きます。最初に筬側のあぜ棒と同じ隙間に物差しを入れて間隔を広げます。正しく隙間が空いていることを確認し、この隙間のあぜ棒を抜いて、筬柄の綜絖寄りの同じ隙間に移動させます。綜絖の手前に移したあぜ棒を、さらに綜絖枠の中をくぐらせて織機の後ろの方に移動させます。


和紙糸

もう1本のあぜ棒も、隙間に物差しを入れて同じように筬柄の綜絖寄りに移動させ、綜絖枠をくぐらせて、1本目のあぜ棒に添わせて、正しい交差ができていることを確かめて、2本のあぜ棒の紐を結びます。
この作業を一人ですることに難しさを感じるかもしれませんが、前述のようにレバー式織機は男巻と間先の長さが短いので、経糸をしっかり張ることができます。
あぜ返しをすませ、同じように経糸を自力で張りながら、千巻に経糸を巻いていきます。千巻の外脇に小さいハンドルがあり、それを回して巻きます。和紙糸は丈夫で切れることはありませんが、ごわつき感があるために千巻の際に巻き込む機草(カレンダー紙くらいが適当)は糸と糸が重ならないように毎回はさむようにします。
レバー式卓上機のセッティングはこうして行います。この織機が随分古いことにも一因しますが、自力で張りながら経糸を織機に巻いていくために、どうしても経糸の全体の張りが緩くなりがちです。特に、こうした和紙糸のように、伸縮のない糸は不向きだったかもしれませんが、とりたてて支障もなく巻くことはできました。


和紙糸

千巻が終わり、綜絖通しに入りますが、その際に筬柄を外します。さらに、あぜ返しをしたあぜ棒にかかっている経糸の順番がわかりやすいように、あぜ棒を立てて吊ります。ここでは4番目の綜絖枠に吊っています。見えやすくなった経糸を、順通しでワイヤーヘルドに通していきます。


和紙糸

通すこと自体は難しいことではないですが、レバー式卓上機の男巻の出っぱりがいささか邪魔で、上体を男巻に覆いかぶせるようにして通すので、姿勢がつらいのことはあります。多分、クマクラの高機に慣れているために感じ方だと思います。
和紙糸自体に扱いにくさはありません。見た目もそうですが、やはり紙の感触はどの工程でもあります。紙から作った糸ですから、それは当たり前なのですが。
cm6.5羽の片羽に筬通しをします。この本筬通しまでは筬柄にはめずに行います。私自身は筬に糸を押し込むタイプの筬通しをするのですが、筬に通す方法を好む方は筬通しの前に筬柄をセットして通した方が良いと思います。
筬柄を備え付けて、男巻のロット棒に筬通しをした経糸を結び付けて、織機のセッティングが終わります。

経、緯ともに和紙糸で織る

和紙糸

レバー式卓上機は、織機の右側に付いている5本のレバーで操作します。「1」と手書きしたレバーは、1番手前の綜絖を上げるレバー。「2」は2番目の綜絖、「3」は3番目の綜絖、「4」は4番目の綜絖を操作するレバーです。「C」のマークはクリアレバーで、1段緯糸を織るごとにクリアレバーで経糸の開口を平らにして、次のレバーを操作します。高機なら踏木で操作する作業を、すべて4本のレバーとクリアレバーで織り進めます。
今回、順通しの平織をします。綜絖に経糸が1−2−3−4と通っているので、レバーの操作は1と3を同時に押し、緯糸を入れて織り、クリアレバーでクリアし、次に2と4のレバーを同時に押して緯糸を入れて織り、クリアレバーを押して、という繰り返しになります。


和紙糸

織り付けの様子です。粗めの筬にしたせいで、かなりざっくりとしています。
この織機は打ち込みが弱く、打ち込むというより押さえる織り方になります。実際、打ち込むよりも強く押さえた方が緯糸が入りやすくなります。筬柄の重さに任せた押さえる織り方で、このくらいの緯糸の入り方です。和紙糸による反発はありませんが、必要以上に緯糸が入り込むこともない、素直な糸かな、という印象です。素材として同じような植物繊維で麻がありますが、もっと柔らかく糊付が必要な弱い糸も多いのですが、この和紙糸は丈夫です。柔らかさはありませんが、織りやすい糸です。
ただ、和紙糸=紙子がすべてこのような糸具合ではないと思います。前述したように、1本の糸の撚り加減が強いこと、その強い糸をさらに双糸に撚り合わせたためだと思います。


和紙糸

さて。
今回のテーマは、和紙糸で文字を織る、です。文字という模様を和紙糸の中に織り込みます。
素材は何であれ、模様を織り込む技法を綴織といいます。
綴織は、タピストリーによく使用される技法です。織り手の創意工夫で、一種絵を描くような感覚で織ることができます。
筬を粗めに設定し、経糸を表に見せず緯糸のみでくっきりと模様を織ることが基本です。技法は幾通りかありますが、色や素材の異なる複数の緯糸を模様の柄ゆきに従って同じ段にすくい入れ、違う緯糸同士を引っ掛けて絡ませる方法、模様の境目の経糸に緯糸を絡ませる方法が主なものです。
今回はこうした正統派ではなく、簡単な方法の綴織を選びました。
文字を織る糸は、カラーの麻糸です。撚りが甘い柔らかい糸で、色は濃いグレーです。この麻糸を2本取りにして、必要な数だけ小管に巻きます。小管の数は、模様の入り方によって増えたり減ったりします。
模様となる文字を書いた下絵を、和紙糸で織った織り付けの裏にまち針で留めます。それを基に、実寸大の文字に合わせて2本取りの濃いグレーの麻糸を入れていきます。


和紙糸

最初に、平織で和紙糸の緯糸を1段織ります。その同じ開口を開けたまま、下絵に合わせて濃いグレーの2本取りの麻糸(以下、文字の緯糸と記します)を文字にかかる部分だけ経糸をすくって通し、表に出して休ませます。文字の模様は、開口した段の中ですくうのに必要な箇所が複数あります。そのために、文字の緯糸の小管を織面に置いておきます。文字の偏と旁(つくり)の始まりが同じ段の場合は、偏と旁の端から別々にすくっていきます。文字のハネなどの細部まですくうと、5〜6個の小管が必要になります。


和紙糸

和紙糸と文字の緯糸を同じ開口に通したら、そこで1回筬柄で押さえます。しっかりと押さえるには、筬柄を押さえたままの状態でクリアレバーを下し、開口を平らにしてもう1度筬柄で押さえます。こうすると、文字の緯糸もずれずに収まります。


和紙糸

そして、次の平織の開口を開き、和紙糸を織り、その段にあてはまる文字の模様に沿って、前の段にすくった文字の緯糸を広げたり、狭めたり、同じ経糸の列にしたりして、織面の上で折り返していきます。自然、織面に文字の緯糸の折り返しのたわみが出ます。この折り返しの形を整えてやると文字の形がすっきりします。


和紙糸

今回は明朝体の文字を下絵にしています。この字体の特徴は、縦の線が太く、横の線が細いことです。横棒は、濃くはっきりさせた方が文字をしっかりと形作ります。その時は棒を間にして2本の小管を同じ段に重ねて織ると、文字の縦の線と横の線の太さに違いがあった方がしっくりした文字になります。
普段書いている文字ですが、ハネ、トビ、などの細部の見落としをしがちで、やり直しすることが多かったのと、微妙な湾曲をこの方法で描くことが1番難しかったです。これは、文字でなく絵模様でも同じ悩みなのですが。


和紙糸

偏、旁(つくり)などの部首、ハネ、トビなどが終われば、そこで文字の緯糸は切ります。その時、やや長めに糸を残して切ります。その方が、後の始末が楽にできます。下絵は、織り進むごとにまち針を移動させていきます。正確な絵を織るためには正確な下絵が必要になります。
こうして織っているうちに、1文字が織り上がりました。「部」の文字です。


和紙糸

この変則の綴織ですと和紙糸の白さが強く出ますが、1段通しで織る緯糸の和紙糸が柔らかい素材感の文字の緯糸をしっかり押さえてくれているので、比較的簡単に模様を描くことができます。和紙糸は織るということ自体には、他の素材の糸に比べても扱いにくいこともなく、ごく自然に織ることができることがわかりました。
次の文字を織り始めます。
各数が少ない方が織りやすいことに気づいたのはこの文字からでしょうか、それでも、日頃書き慣れている文字は、次にどういう部首が出てくるか記憶があるのでわかりやすいです。「楽」の文字です。


和紙糸

この次の文字は、実際に書いたことがないかもしれない文字です。記憶にない文字は、篇と旁のバランスや横棒1本でさえ忘れてしまいがちです。この文字に集中しずぎて、下絵全体を見忘れてしまいました。濃いグレーの麻糸で描く文字の隣に別の文字を入れるはずでした。数段戻して、またやり直しです。
隣に描く文字は、濃いピンクの麻のスラブ糸を使用します。この糸は太いので1本遣いです。


和紙糸

グレーの文字の緯糸と赤い文字の緯糸を同時進行させていきます。綴織の特徴ですが、全体の段数を揃えながら模様を織っていくことで1枚の織布の歪みをなくしていきます。(*注 あえて歪ませる技法もあります。)グレーの文字を整えたら、次は赤の文字を。その段を終えたら、和紙糸を織り、次の文字の形を作っていきます。
自筆でほとんど書いたことのない「倶」の文字です。


和紙糸

そして、赤い文字の緯糸は、「晴」の文字です。なんのことない、自分の名前です。
ここまできて、自分の名前のバランスが悪いことに気づきました。偏の「日」の大きさがかなり大きいことは織っている時からわかっていましたが、旁の「青」がおかしい。あれ??
「青」の上の部首の横棒のバランスを間違えました。上と下の横棒は同じ長さで、真ん中の横棒が一番幅が短いのが文字として正解でした。昔から自分の名前を書くのが一番ヘタクソだったのですが。
でも、引き返すとなるとグレーの文字の緯糸の文字も戻さねばならないので、仕方がないのでこのまま進めることにします…。すでに、「物」の文字に入っています。


和紙糸

「物」の文字と同時進行で、アルファベットの「HARU」を織っていきます。


和紙糸

そして、最後の「織」。

描いた文字は、「HARU 晴 織物倶楽部」でした。どれだけ、自分が可愛いんだっていう選択ですが。

和紙糸の織布の仕上げ


和紙糸

レバー式卓上機は、織り終いまで開口が良く、ろくろ式高機と違って経糸の最後の方まで無理なく織ることができます。ただ、和紙糸の織り具合を感じたいという当初の目的は果たせたことと、模様の文字を織り上がったので、織り上げの10cm程度を和紙糸の平織で織った後、切り離します。
文字の描き終わりの文字の緯糸の切り端を始末します。すくった緯糸の収まりが悪いようだったらこのままにしておくつもりでしたが、しっかりと押さえられているので織面ギリギリまで切ります。


和紙糸

すくった文字の緯糸は押さえられていますが、地になった和紙糸の緯糸の方が織り始めや織り終いから解けかかってきたので、捨て分を玉結びにして織布を安定させます。
質感は、やはり堅いです。水に通したらどうなるか?少しは柔らかくなるのかどうか、30分くらい浸してみます。


和紙糸

水からあげた感触も、しっかりしています。さらに、脱水せず天日干しをします。元は紙ですから、乾くのは早いです。
水に通しても特に柔らかくなることはありませんでしたが、質感が織り上がりの時よりもしなやかになりました。
今回は経糸緯糸共に和紙糸を使いましたが、経糸のみ、あるいは緯糸のみの使用の選択もあったかもしれません。柔らかさを求めるなら、むしろその方が良いかもしれないとも思いました。紙布の帯は使いこなすことで柔らかくなると聞いたことがありますが、帯の場合は経糸が絹糸が多いようです。違う素材を合わせて使うことで、織布の使い方の幅を出す方が面白いのかもしれない、という感想です。
特に織布の目的もなく織った和紙糸の文字布。
しばらくはそのままにしておきましたが、形にしてみようかと思って、昔織った裂織の織布にかがってみました。
何となく、10年目の記念碑みたいになってしまいました。


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