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HARUの織物制作「裂織のコースターを織る」

布を裂いたり切ったりして緯糸にして織る技法を、裂織(さきおり)といいます

家系が代々物が捨てられない性格だったので、押し入れや滅多に開けない箪笥の底に古い布がたくさんありました 裂織という技法を知ってから、「使わないならちょうだい!」と様々な布を裂き、切り、いっとき裂織の作品を盛んに織りました


裂織コースター

古い綿の布団皮をざっくり裂いてタピストリー、ボロのような絹の羽裏を細く裂いて絹の経糸に織り込んで裂織マフラーや服地、メリンスの長襦袢でクッションカバー、古い浴衣地でラグマット、父の残した50本ほどのネクタイを切ってタピストリー、果ては古いタオルを切って足ふきマットまで織りました

中でも、数として1番多く織ったのは裂織のコースターです
個展のたび、100〜150枚のコースターを織っては販売しました 主役のマフラー、ショールをあらかた織った後、おおよそ2週間ほどの時間で、とにかく数で勝負とばかりに、何も考えずにただひたすらに織っていたことを思い出します

500円きっかりの価格は個展活動の間変えず、観てほしいというよりも、完売してほしいものでした 自身には愛猫がおり、生まれつきの病気のために一生涯飲み続ける必要のある高額な薬代捻出のためです だから、かなり切実な制作でした(その後、ジェネリック薬品のお陰で薬剤費は安くなりました)

経緯(たてよこ)とも糸を使用したコースターも織りましたが、裂織の方が人の目にとまりました 裂織の素朴さ、布の模様が制作者の意図とは関係なく出てくる不思議な味わいが、人を引きつけたのだと思います

今でもコースターを依頼されることがあります ワンコインの手軽さ、販売の上で動きがいいことで、マフラーがショールなどに比べると出番が多い作品です
今回、久しぶりにまとまった数のコースターを織ることになりました

裂織の素材は、特に選びません 綿布、絹布、時には化繊の布を使用することもありますが、ウールの布はコースターには向かないようです メリンスのような薄い布はできますが、ウールの着物のような地厚な布は弾力があり、打ち込んでも弱くなってしまいます 自身は綿布が好きなのですが、絹布の方がお客様には喜ばれます なるべく弱くなった布を使うようにしています 古布でなくともいいのですが、クタクタくらいの襤褸布(ぼろぎれ)が最適です


裂織コースター

裂織は、裂布が主役です 経糸は主役を支える脇役くらいの選び方が、布が生き生きとしてくれるように感じます
そんな主旨で、まず使用する布を選びます 今回のコースターは、「きれいが勝負」でいきたいので、古くても色のきれいな羽裏や八掛けを利用します 今回、裂織のコースターを40枚織りますが、20枚ずつ経糸を掛け替えて、違う経糸で雰囲気を変えたいと思います

コースターは、カップなどの食器に敷くことの他に、テーブルを傷めない役割もあります それらの目的に添う、使いやすい大きさにしたいと思います 出来上がりのサイズは、11cm四方で房を1cm程度つけます

織計画です

15羽/4ツ
綜絖
2本引き揃え
3寸 = 約11cm
長さ
11cm + 1.5cm(織縮み分) + 4cm(房分) = 16.5cm
16.5cm × 20枚 = 330cm = 3.3m
整経長
3.3m + 0.5m(捨て分…織れない部分) = 3.8m
全本数
15羽 × 4 = 60本 × 3寸 = 180本
糸全長
180本 × 3.8m = 684m

15羽/4ツは、鯨尺15羽の1目に4本の糸を通すこと また、綜絖の2本引き揃えは、1本のワイヤーヘルドに2本の糸を一緒の通すことをいいます
裂織の織縮みは、糸のみで織る布よりも経糸分は大きくなります ここでは15%の織縮みで計算し、1.5cm分を11cmに加算しています 緯の織縮みは、緯糸となる裂布が太いためにほとんどありません
房分を4cm(1枚のコースターの前後、2cm × 2 = 4cm)加算したのは、房を作る時に余裕を持たせたいためです 実際には1cm程度の房になります
経糸には、綿糸30/2と16/1を使用します これは、かって綿着尺を織った時の残り糸です
この織計画は、1回目、2回目とも同じになります

裂織コースター

1回目のコースター20枚は、布をピンク〜赤系でまとめます
経糸は天然染料で、刈安のアルミ媒染:ヘマチンの鉄媒染淡色:ヤマモモの銅媒染淡色:ヤマモモのアルミ媒染淡色
大管の数は16本、各色を上記の順で5:5:4:2の割合にします この割合に特に理由はありませんが、明るい色が多い方が裂布引き立つことと、淡いグレーを入れることでどんな裂布でも引き締める効果があるかと考えたからです


裂織コースター

大管の並び順は、ざっくりと決めていきます 並び方の基準は上段と下段の色が重ならないようにすることです 大管立ての上段下段を使い、1列置きに並べます 綜絖2本引き揃えは、上段下段の1列の糸をひとつのワイヤーヘルドに通します 引き揃えは、大管に2本の糸を同時に巻く方法もありますが、それだと大管に巻いた時に2本の糸が同じ張りで巻かれず弛むことがあります 1本ずつ大管に巻いて整経をし、綜絖通しの時に一緒にした方が後の作業が楽で、織りやすくなります
この並びで大管立てに大管を立て、3.8mの輪整経をします


裂織コースター

粗筬は15羽の1目に8本の糸を通し、一目空けて繰り返します


裂織コースター

経糸だけを見るとぼんやりとした印象ですが、布を主役にするにはこのくらいの主張のなさの方が引き立ちます
通常通り千巻を行い、綜絖通しは糸2本を1本のワイヤーヘルドに引き揃え、筬通しは1目に4本を通します
男巻に結び付けたら、裂織の始まりです


裂織コースター

布にはそれぞれ特性があり、裂きやすい方向があります また、裂けない布もあります
裂織はできるだけ布を長く裂いた方が簡単に織ることができますが、浴衣地などを除いて、和物の布は概して経の線には裂きにくいきらいがあります 試しにピンクと黄色のぼかしの羽裏の端を鋏で切り込みを入れ、経の方向に裂いてみます


裂織コースター

裂けないことはないですが、裂いた時の抵抗感が強いです また、裂いた傍から繊維の屑がまとわりついてきます
コースターの織り始めは、裂布の糸止めのために経糸と同じ糸で数段織ります 大管の残糸2本を小管に巻いて、4段織ってから裂布を入れます
経の線に裂いた裂布を織り込んでみます 絹のきれいな羽裏で、ぼかしの色も絣のように出てきます


裂織コースター

きれいに織れそうなので、まとめて経の線にそって裂いておきます


裂織コースター

裂いた布を、小型の板杼に巻きます


裂織コースター

織り進んで、途中で裂布が千切れたりなくなったら、糸を織る時と同じように1cm程重ねて織り続けます


裂織コースター

専用の紙テープに12.5cmの目盛りを付けておき、それを織った裂織に重ねて必要な長さになったかを確かめます


裂織コースター

織り終いは、裂布を斜めに切って経糸の端に引っ掛けて最後の段と同化させます


裂織コースター

裂布止めの緯糸を4段織って、1枚目のコースターを織り上げます


裂織コースター

2枚目のコースターを織る前に、房分の余白を空けます それも紙テープに目盛りを記しておきます 前の分2cmで、次の分2cmです 4cm先に再び糸止めの緯糸を4段織ります


裂織コースター

今度は、同じ羽裏を緯に裂いてみます この方が抵抗感なく裂けます ただ、布の幅が狭いので折り返しが多くなりますし、裂いてうっかり布を離してしまいがちになります これも、試しに織ってみます


裂織コースター

同じ布ですが、裂き方の方向で出てくる模様が変わってきます どちらがきれいかはそれぞれの感覚ですが、自身は緯に裂いた方が布のぼかしが活かされていると思い、その後はこの布がなくなるまで緯に裂いて織り込みます


裂織コースター
裂織コースター

裂織は布の模様が浮き上がりますが、その模様は裂いて織ってみないとわからない不思議な織物です 敢えて整えた意匠を求める場合もありますが、自身は無作為の模様を楽しみたいと思います
この羽裏を裂くと、こうした柄になります


裂織コースター
裂織コースター

また、別の布を裂いて織ると、この模様になります


裂織コースター

以前織った時の余りの綿の裂布ですが、幅が2cm程の太さでした 布の種類や古さにもよりますが、裂織は裂布の幅が広いと地厚になりがちです


裂織コースター

今回はもう少し細く裂いて、厚さを薄くします


裂織コースター

同じ裂布を平織に織ったコースターです


裂織コースター

綜絖1-2、3-4を交互に繰り返す織り方で、斜子織の技法です 質感がたっぷりして、厚みが出ます 裂織の斜子織は、緯の幅が縮むことがあるので、余裕を持って裂布の山を作って織ります


裂織コースター

綜絖に千巻が迫ってきたら、織り終わりです 最後に糸で1〜2cm織って、経糸を切ります

計画より1枚多く、21枚織りました


裂織コースター

2回目の経糸は、青、グレー系の布に合わせて青を基調にします


裂織コースター

青は藍の淡色、緑は藍に黄色の天然染料をかけた糸です 糸本数や整経長は、1回目と同じです


裂織コースター

2回目に使用した布は手で裂けない布が多く、裁ちバサミの出番が多くなりました 手で裂けない布を裂布にしたい時の布の裁ち方は、鋏の他にロールカッターなどで切ります あればロックミシンに糸をかけずにカットしても便利です
今回はさほど大きな布ではないので、裁ちバサミを用います 鋏を使うと切り口が曲がり気味になってしまいますが、今回の裂織コースターは打ち込みが強いで、不均等の幅でもさほどの支障はありません
裁ちたい方向に切り込みを入れます


裂織コースター

布端を足で押さえて、鋏の刃で一気に布を切ります


裂織コースター

または、布の緯に切る時は、床に布を置いて鋏で切ります

切った裂布はから出る布のケバやカスは、織る前に取り除いておく方が織りやすく早く進みます


裂織コースター

仕上げは、布を作品にするための大切な作業です
裂織のコースターの仕上げは縫製と水通しですが、丁寧に仕上げをした方がコースターの完成度が増します 縫製といっても、経糸を束ねて糸で結ぶ作業です 今回のコースターは、経糸が細いことと房のための経糸の長さが4cmと短いので、和裁縫の道具の絎台(くけだい)を使用します 通常絎台は利き腕の反対側にかけはりという布を引っ張る道具を横に置いて、布が弛まないように引っ張って使用しますが、今回は真っ正面から手前に向けて、経糸を手前に引っ張るようにします


裂織コースター

房を結ぶ糸は、経糸と同じ糸を用います その方が違和感なく仕上がります 普通の縫糸より太めなので、ステッチ針の細めタイプが便利です
織り始めと織り終わりのコースターは、1〜2cm糸で織った部分にかけはりを挟みます 1cm程度の幅に決めて、最初のひと針のみコースターの裂布を留めた糸の部分に刺します その後は1cmごとに経糸だけを拾っていきます
経糸1cm分の背後に針をくぐらせます


裂織コースター

そのまま表側に糸を出します


裂織コースター

もう1回同じ箇所に針を通し、糸の輪を作ります


裂織コースター

糸の輪に針を通します


裂織コースター

そのまま糸を引っ張り、1cm分の経糸を束ねます 縫糸と違い弱い糸なので、引っ張りすぎないようにします


裂織コースター

経糸を張っているかけはりは、常に房を結ぶ箇所の真正面に移動させます 曲がっていると、房も曲がることがあります


裂織コースター

この連続で、ほぼ1cm間隔で房を結んでいきます 最後の房を結んだら、もう1度輪を作り、結び目を強くします
この次からは、コースターの裂織にかけはりを挟んで引っ張ります


裂織コースター

同じように、片方ずつ丹念に結んでいきます


裂織コースター

房をすべて結んだら、水通しの仕上げをします 裂織は、布から色が落ちる場合があります コースターどうしが重ならないようにずらして色移りを避け、1〜2時間水に浸けます 房を結んでから水通しの仕上げをすると、経糸を結んだ糸も締まり、形の良いコースターになります 充分に水を浸透させたら、濡れたままの状態で干します 裂織は乾きにくい織物ですから、天気のいい日を選んで行います


裂織コースター

繋がったままのコースターを、きれいに1枚の布に切ります
コースターの端を揃えて、2枚を重ねます


裂織コースター

房に結んだ糸を鋏で切ります


裂織コースター

1枚ずつに切ったコースターを、二つ折りにします 上下の房の長さを揃えます 織り歪みがある時は、裂織の四隅を引っ張って形を整えます


裂織コースター
裂織コースター

1回目で21枚、2回目で20枚のコースターが完成しました

2013年7月下旬からの「アートクラフトマーケット」に出品します
涼しい蓼科で、この子たちがお客様に愛されますように!


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